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「数分間のエールを」クリエイター志望学生にエール、和泉風花「いつかご一緒できたら」

2024年06月06日 20:54  コミックナタリー

コミックナタリー

オリジナル劇場アニメ「数分間のエールを」学生向けティーチインイベントの様子。左から和泉風花、ぽぷりか監督、おはじき副監督。
オリジナル劇場アニメ「数分間のエールを」の学生向けティーチインイベントが、去る6月4日に、専門学校HAL東京内のコクーンホールAにて開催された。

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6月14日公開の「数分間のエールを」は、映像制作チーム・Hurray!と脚本家の花田十輝が送る“モノづくり”青春群像劇。MV制作に没頭する男子高校生・朝屋彼方と、音楽の道を諦めた女性教師・織重夕の出会いから物語が動き出す。

未来のクリエイターを応援する一環として実施されたティーチインイベントには、クリエイターを目指す学生たちが現地、そして生配信で全国各地より参加。イベント前半の試写を経て行われたティーチインでは、Hurray!のメンバーであり監督・副監督をそれぞれ務めたぽぷりか、おはじき、さらに中川萠美役を務めた和泉風花のトークに耳を傾けた。MVが作中で重要な要素となる「数分間のエールを」。同作では「未来のクリエイターを応援したい」という思いから、イベント会場となったHAL東京の学生に、織重夕が歌う楽曲のMVの制作を依頼しており、CG・デザイン・アニメ4年制学科アニメーションコースの学生たち主導のもと、関係者のフィードバックを受けつつ、今まさに映像を制作している。

自身もMVを手がけるぽぷりか監督は、主人公にMV制作に情熱を注ぐ少年・朝屋彼方を設定した理由を聞かれると、映画制作の機会をもらえることは誰にでもあることではないと前置きをしつつ「次がないなら、この1回でいろんなモノを作っている人に向けて“あなたがしていることはすごいよいことなんだよ”と伝えたかったんです」と熱い思いを明かす。さらに「今の時代、モノづくりは儲かるものではない。それでも自分の意志でやりたいと思って、しんどいことも辞めたいことがあっても続けていることはよいことなんだと。自分自身そのように生きてきたから、自分のことを話したほうが伝わると考えてMV制作を主軸に制作しました」と自身の経験も踏まえ、真摯な思いを伝えた。おはじき副監督も同じ思いだったようで、「チーム名のHurray!(フレイ)は応援の“フレーフレー”からきているのですが、モノづくりをしている人を応援できる内容にするならこれしかないなと」と言葉をつなげた。

Hurray!の2人にとって、アフレコなどの音声収録は今作が初めて。オーディションでは、4人のメインキャラクターに対し各100本ほど、合計400本のテープ音声が送られてきたそう。おはじき副監督は「ぽぷりかは『中川萠美は和泉さんしかいない!』と言っていたんですよ。テープの時点で完璧だったんです」と当時を振り返る。この場で初めて監督の思いを聞いた和泉は「役者冥利に尽きる言葉を……! ありがとうございます!」と感激。収録でも役柄とのマッチ具合から、監督からのディレクションが一切なかったそうで、「実はアフレコ時は音響監督さん経由でOKをいただいていたのですが、監督からの指示や要望がまったくなくて少し不安でした(笑)」と笑顔で当時の様子を語った。

イベントには映像制作に関わる学生が多く参加していたこともあり、「数分間のエールを」の制作フローに言及する場面も。ぽぷりか監督は、脚本制作から、動画制作のメインツールとして使用されたオープンソースの3DCGソフト・Blenderでのコンテ制作や仕上げ、モーションキャプチャーでの動きつけなど、6つに分けて制作フローを解説。中でもモーションキャプチャーは、専用スタジオではなく、おはじき副監督の自宅に機材を運び入れて行うという手法が取られたそう。ぽぷりか監督、おはじき副監督が互いにアクター兼ディレクターとして全キャラクターを演じきったことを明かし、少ない人員と機材でも完成度の高い作品が制作できることを学生たちに示した。

イベントでは学生たちから登壇している3人に質問できるコーナーも実施。各キャラクターのエピソードには制作陣の体験が反映されているか、という問いには、ぽぷりか監督が「織重夕、朝屋彼方にそれぞれ半分ずつ自分が入っています。彼方のほうが少し強いかもしれません。外崎大輔は花田さんから降りてきた脚本に肉付けをしていった感じです」と回答する。一方、おはじき副監督は外崎に共感したそうで「キャラクター像を作っているときに『外崎はもっとこうだ!』と意見を出すことが多かったです(笑)。外崎は制作陣の誰かではないのですが、それだけ思い入れが強いキャラクター。なので、生まれたときはこういったキャラクターじゃなかったですが、だんだんこうなっていったというのはありますね」と制作の裏側を伝えた。

ストーリーを作るうえでの悩みを聞かれた場面では、ぽぷりか監督が「僕はずっとMV制作をしていたので、無音で映像を作るのが苦手だと、今回初めて気づきました」と新たな試みの難しさを語る。続けて「『この尺で切る意味ってなんだっけ?』と何度もつまずいて。なので、サンプル曲を当てはめてVコンテを作るという工程を連続していきました。本作では15曲くらいの楽曲を使っていますが、ある意味それぞれのMVをつないだような作品になっています」と独自の制作スタイルで完成までたどり着いたことを話した。

イベントのエンディングでは、登壇者から学生たちに向けたエールが送られる。和泉は「きっと皆さんは何かを目指されていて、こうなりたいという目標があると思います。私も少しだけ遠回りしたことがありましたが、その遠回りした経験自体が役に立ったこともありますし、無駄なことなんてなかったと実感しています。皆さんもこの先、自分が誰にも認められていないとか、何も価値がないって思う瞬間に出会う瞬間があるかもしれません。それでも、絶対誰かが見てくれています。楽しくクリエイトを続けて、いつかご一緒できたらうれしいです。本日はありがとうございました!」と過去の自身の経験を伝える。おはじき副監督は「僕たちも大学で出会って、モノづくりに関わって10数年でようやく映画を作らせていただく機会に恵まれました。楽しいこともつらいこともあって、ようやくここに立っています。皆さんはこれから困難にぶち当たると思いますが、諦めずにモノづくりを続けていただくことが、僕たちがこの作品を作った意味になります。どうかがんばってください!」と言葉をかけた。

ぽぷりか監督は「今回、試写会を繰り返す中でいろんな人がSNSで反応をしてくれていて、僕のことをフォローしていない人や接点のない人が、僕の卒業制作を挙げて『アレを作った人か!』といった反応をしてくれているのを見て、自分は誰かに見られているのだなと実感しました」としみじみと語る。また学生たちに向けて「皆さんも、自分がやってきた“正しい”“がんばりたい”と思えることを続けてほしいと思います。どこかでダメだったと思うこともあるかもしれませんが、それまでがんばったことは決して無駄にはなりません。あのとき悔しい思いをした経験を活かして、太く・強くなれるための過去になるので、どうか、折れずにモノづくりを続けてもらえたらうれしいです」と未来のクリエイターたちに思いを伝えた。

■ オリジナル劇場アニメ「数分間のエールを」
2024年6月14日(金)全国公開

□ スタッフ
監督:ぽぷりか
副監督:おはじき
アートディレクター:まごつき
脚本:花田十輝
歌唱楽曲制作:VIVI
音響監督:小沼則義
音楽:狐野智之
制作:Hurray!×100studio
配給:バンダイナムコフィルムワークス

□ キャスト
朝屋彼方:花江夏樹
織重夕:伊瀬茉莉也 / 菅原圭(歌唱アーティスト)
外崎大輔:内田雄馬
中川萠美:和泉風花

(c)「数分間のエールを」製作委員会