トップへ

カスハラ実態調査「前回より減少」…でも現場は疲弊「女じゃ話にならないから男を呼べ」「日本刀で威嚇」

2024年06月05日 18:30  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

小売・サービス業におけるカスタマーハラスメント(カスハラ)の実態調査が6月5日に公表された。産業別労働組合「UAゼンセン」によるもので、流通・小売業・飲食・医療・サービス業などで働く組合員3万3000人をアンケート対象として、今年1月~3月まで実施した。


【関連記事:■カップル御用達「ラブパーキング」、営業拡大で3年目へ 70代男女管理人を直撃】



直近の2年間でカスハラの被害にあったと回答した組合員は46.8%(1万5508人)となり、2020年に実施した前回の調査と比べて減少した。



UAゼンセンは、社会喚起や企業労使の取り組みの成果が出たのではないかとしているが、いまだサービス業の2人に1人がカスハラを受けている状況の改善のため、法整備などの対策が必要だと提言した。



●全体ではカスハラ被害経験が低下 女性の行為者増加

UAゼンセンは、2017年、2018年、2020年に続き、2024年も小売・サービス業で働く組合員を対象に、カスタマーハラスメント(顧客等による過剰な要求や迷惑行為)の実態についてアンケート調査を実施した。



直近2年以内で迷惑行為被害に遭ったと答えた割合は46.8%(1万5508人)で、前回2020年結果での56.7%(1万5256人)から約10ポイント減少した。



迷惑行為をしていた客の性別と推定年齢については、2020年調査では「主に40~70代の男性がカスハラをする」と結論づけられていた。今回の調査でも40代以上の客が9割以上を占めたが、特に70代以上の割合が大きく増えた。
〈20年:11.5%(1750人)→24年:19.1%(2955人)〉



また、20年調査と比較して、男性の割合が減少し、女性の割合が増加した。
〈20年・男性:74.8%(11415人)→24年:70.6%(10945人)〉
〈20年・女性:23.4%(3567人)→24年:27.1%(4210人)〉



カスハラの行為者が中年以上が占める背景について、流通部門執行委員の佐藤宏太さんは「40代以上は、自分たちが苦労してきたという意識が強い。求めるサービスより下の場合は納得いかない状況になりやすい」と指摘する。



特に大きく割合が伸びた70代以上の世代には、「メディアに触れる機会が少ないと言えるのかもしれない。カスハラという言葉自体を知らない方も多いのかもしれない」と指摘した。



具体的なカスハラ行為については、2020年調査と同様に「暴言」「威嚇・脅迫」「何回も同じ内容を繰り返すクレーム」が半数以上を占めた。増加したのは、「長時間の拘束(11.1%)」「セクハラ被害(3.7%)」「SNS・インターネット上での誹謗中傷(0.8%)」。



また、組合員が働いている企業で迷惑行為対策を問う設問では「特に対策はされていない」が最多となった。マニュアル整備や専門部署の設置などで取り組みが若干増加したものの、課題が見える。



カスハラを受けたことで、「嫌な思いや不快感が続いた」と回答した人は半数を超えた。それだけでなく、「寝不足が続いた(1.2%)」「心療内科などに行った(0.8%)」などのカスハラ被害が心身に及ぼす影響も見えた。



今回の調査結果を踏まえて、UAゼンセンは、カスハラを受けた労働者の相談に適切に対応したり、対応マニュアル策定など被害防止のための対策を事業主に義務付ける法制化を求めていく。



一方で、カスハラの対策を事業主の努力に委ねるのではなく、カスハラは許されないという社会的な合意形成に向けて、消費者教育の強化が必要だとも提言した。



※今回の調査は2024年1月18日~3月18日まで実施。UAゼンセン所属組合員を調査対象として、210組合3万3133件の回答を得た。



●【アンケート調査に寄せられた被害報告の一例】

・冬の屋外で2時間以上、謝罪をさせられた。



・パチンコが出ないというクレーム対応で「責任者を呼べ」と言われたので「私ですと」答えると「女じゃ話にならないから男を呼べ」と言われた。



・「女のくせに」と暴言を吐かれ、日本刀を持って再来店され非常に恐怖を覚えた。



・接触したかしないかで、謝罪はしたものの、謝罪がないとSNSで名指しで投稿された。



・名前からメールアドレスを特定し、何件もメールを送られた。電話をしてきても毎回指名で、かつ一回の電話が長い。