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クラッシュ前からオコン放出を決めていたアルピーヌF1。ガスリーには契約延長を望む

2024年06月05日 17:50  AUTOSPORT web

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ピエール・ガスリーとエステバン・オコン(アルピーヌ)
 アルピーヌF1チームが、エステバン・オコンの2024年シーズン末での離脱を発表したタイミングから、オコンがF1モナコGPでチームメイトに接触したことで、チームが彼との契約を延長しないことを決めたのだという見方が広くなされた。しかし、実際にはアルピーヌは、すでにオコンの放出を決定しており、モナコのインシデントによって、発表を早めたにすぎないようだ。

 このタイミングでオコンの放出を発表することで、ブルーノ・ファミン代表は、移籍先を探している最中であるオコンの立場を悪くしたといえるだろう。オコンはキック・ザウバー/アウディとハースの2チームとしか本格的な交渉を行っておらず、今後、話し合いを自分の有利な形で進めることが難しくなると思われる。オコンがチームの指示に背いてピエール・ガスリーに仕掛けてぶつかったインシデントの直後、ファミン代表は激怒し、厳しい罰を科すと示唆していたが、これこそがその罰と言えるかもしれない。


 今シーズン、オコンの方がガスリーよりも速いことが多いため、アルピーヌがガスリーを選び、オコンを放出する計画を立てていたことは、奇妙に思われるかもしれない。だが、ファミンと技術チームがそういう決断を下したのには、それ相応の理由があったようだ。

 メルセデス傘下のオコンは、マノー、フォース・インディア/レーシング・ポイントでレースに出場した後、2019年はメルセデスのリザーブドライバーを務めた。翌年2020年にルノーに加入、後身アルピーヌに現在まで所属している。2020年にはサクヒールGPで2位を獲得、初の表彰台に上った。オコンは2021年ハンガリーGPでは初優勝を飾っている。

 2021年にオコンはフェルナンド・アロンソとペアを組んだ。最初の5戦は、F1に復帰したてのアロンソより好成績を収めたオコンは、6月の段階で、2022年からの3年契約を結ぶことができた。ところがその直後から、アロンソの方が良いパフォーマンスを見せるようになり、その傾向はアロンソが離脱する2022年末まで続いた。

 2023年にガスリーが加入した当初、ふたりの力は互角だった。しかし次第にガスリーはチームメイトを上回る速さを発揮し、チームと共に仕事をする姿勢もより前向きで、チームのために最善を尽くしたいという強い意欲を示した。一方でオコンは、チームメイトに勝つこと、物事を自分の思いどおりに進めることの方に関心があるように見られていた。

 オコンは、チームはガスリーを優遇して、最も優れたエンジニアやメカニックを回しているなどと、常に不満を言っているといわれる。現在、アルピーヌチームのエンジニアやメカニックたちの間でオコンは不人気で、それも、チーム上層部がオコンを今季末で放出しようと考えていた理由のひとつだった。

 かつてメルセデスに所属し、現在ウイリアムズ代表を務めるジェームズ・ボウルズは、オコンのマネージャーでメルセデスのアカデミーを監督するグウェン・ラグリュとは良好な関係にあり、2019年にオコンがメルセデスのリザーブドライバーを務めていた時代に彼と仕事をした経験もある。そのボウルズに、オコンを獲得する意向は全くないといわれる。チームスピリットに欠けているとの評価によって、バルテリ・ボッタスの後任としてメルセデスに加入するチャンスをつかめず、今はウイリアムズへの道も閉ざされている。

 ガスリーとオコンは、子どものころ、カートレースにおける激しいバトルをきっかけに、それぞれの家族を巻き込む形で不仲に陥った。月日がたち、ふたりは同じフランスのF1チームで走るようになったが、2年でこのペアは解消されることになった。モナコでの一件は、ファミンが素早く決断を公にする機会となり、チームは夏休み前にはガスリーの残留を発表する可能性が高いと考えられている。