勤め先から「明日から来なくていい」と言われたら、誰もがショックを受け、なかには許すまじと強い怒りを感じる人もいるだろう。
北海道の50代前半の女性(教育・保育・公務員・農林水産・その他/年収100万円未満)は、小さな事務機器の会社で事務補助のパートとして働いていたとき、社長から電話で「売り上げが減ったから退職してほしい」と言われてしまう。業績が悪いことは事実であり、退職を受け入れた女性だったが、あろうことか社長は「明日の仕事が終わったら来なくていいよ」と伝えてきたのだった。
解雇するなら少なくとも30日以上前に予告するか、代わりに解雇予告手当を支払わなければならないはずだが、この社長は法律にうとく、「パートには解雇通知は必要ない」と思っていたようだ。すぐに、おかしいと思った女性の夫が社長に電話して色々と権利を主張したというが、そんな状態で無事に退職できたのだろうか。
「女性には威張り散らす社長ですが、男性にワァーと言われるのがダメ」
女性が社長から電話で解雇を伝えられた翌日、事務の先輩に相談した。するとこの先輩が女性のために動いてくれたようだ。
「退職することが決まったので先輩が慌てて勤務日からの雇用保険の手続きをしてくれて、1か月後の退職日には雇用保険に加入していて、有休消化して退職することができました」
結局、社長は解雇予告手当を支払うのではなく、解雇日を1か月先に伸ばすほうを選んだようだ。また社長は、パート従業員には「雇用保険も必要ない」とも言っていたが、女性は1日4時間、週に20時間以上働いていたため雇用保険の加入条件を満たしていた。
こうして先輩の計らいで無事に退職できたと思っていた女性。ところが退職後に、またもややきもきさせられてしまう。
「年末年始を挟んでも離職票が届かない。先輩が色々と確認したら、退職の手続きがされていないとのこと!! 先輩が社長に確認したら『もう手続きしたよね?』と言われて、話をすり合わせていったら『加入手続きしたらあとは何もしなくていい』と考えていて、先輩が慌てて手続きをしてくれて無事に失業手当が完了しました」
事情を聞いた女性は、先輩がいなかったらどうなっていたことかと青ざめたに違いない。
最近この先輩から連絡が来て「お陰でしっかり有休消化できるようになったよ」と感謝されたようだ。【前編】で紹介したとおり、女性の夫が社長に「退職する際には有休を使わせてもらう!!」などと強く言ったことがきいたようだ。
「女性には威張り散らす社長ですが、男性にワァーと言われるのがダメ」
なんともダサい社長である。そして、近々この先輩も辞めると明かし、
「頼りない社長の代わりにパキパキと仕事をこなしていた先輩が退職したら、もし新人が入ったとしても先は長くないだろうなと思っています」
と結んだ。