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「平成レトロな写真が撮れる」コダックのコンデジが人気沸騰中

2024年05月29日 16:41  Fashionsnap.com

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コダック「PIXPRO FZ55」で撮影した写真

Image by: FASHIONSNAP
 2023年頃から若者を中心にブームとなっている「コンパクトデジタルカメラ(以下、コンデジ)」。国内最大級の通販比較サイト「オークファン」によると、ヤフーオークション上での該当商品の2023年の取引数はブーム以前の2022年比で167%に伸長。2024年は5月時点で前年比54%で推移しており、通年では同133%での着地を見込んでいる。  急拡大しているコンデジ市場だが、中でも「コダック(KODAK)」製品の勢いがめざましい。BCN社が5月24日に発表した「4月度 デジタルカメラ全体メーカー別販売台数シェア」によると同社製品が22.5%のシェアを獲得し、初の月間首位に輝いた。特に人気商品「PIXPRO FZ55」は、シリーズ別販売台数で全体の1割以上を占め、全シリーズトップの売上台数に。現在通販サイトで欠品が続いているほか、アマゾンや楽天市場などで定価以上の“プレ値”で販売されるほどの人気を見せている。

 コダックの「PIXPRO FZ55」は、スリムなボディにリチウムイオンバッテリーを搭載していた「FZ53」の後継機という扱いで2022年8月に発売。ブラックとレッドの2色を展開している。

 「FZ55」人気の理由は大きく3つある。1つ目は、「平成レトロなフィルムカメラっぽい写真が手軽に撮れること」。「FZ55」の有効画素数は1635万画素。現在展開されている最新型の「iPhone 15 Pro Max」の有効画素数は4800万画素なので、物を鮮明に写すという点においてはiPhoneに軍配が上がるが、「光と影の境界がはっきり綺麗に写る」というカメラ本体の特徴や、手ブレ補正の効きがやや甘いといった理由などから、オートモードで撮影しても平成初期~中期を連想させるような「エモい」写真が撮れるのが特徴だ。写真撮影が趣味で、一眼レフカメラのサブとして同モデルを愛用しているHさんは、「これを撮りたいといった明確な目的がなく『なんでもない日常を切り取りたい』と考えている人には、画素数を追求したカメラよりも『FZ55』の方が向いている」と説明。コンデジではついてないものも多いフラッシュ機能も搭載しており、「暗いところでも気にせずシャッターを切れるのも嬉しい」と語る。


 2つ目はストレスなく持ち運べる大きさ。「FZ55」の外観寸法は、幅91.5、高さ56.5mm。「iPhone 15 Pro Max」が幅76.7、高さ159.9mmなので、縦に重ねれば3つほど積み上げられそうなサイズ差がある。重量も「iPhone 15 Pro Max」の221gに対して「FZ55」は106gと半分以下だ。「私は手が小さいのでiPhoneでは両手で支えながら写真を撮らなければならないが、『FZ55』は小型なので片手でシャッターを切ることができる。その分もう片方の手で被写体に光を当ててライティングを調整したりと、写真を撮る楽しみも広がる」(Hさん)。

 3つ目は価格だ。「FZ55」の定価は税込1万9580円。品薄となったことで、現在各通販サイトでは定価よりも高額で販売されているが、それでも相場は2万5000円前後で3万円あればお釣りがくる(2024年5月時点)。コンデジと一言で表現しても価格帯は幅広く、中には10万円を超えるアイテムもある。使い勝手や満足感を考えると「FZ55」の価格設定は非常にコスパが良いと言えるだろう。また、現在流行している「オールドコンデジ」(2000~2010年近辺のコンデジ)とは違い、サポートが充実していること、バッテリーの持ちが良いこと、変換アダプターを使って撮った写真を5分後にはインスタグラムに投稿できることなどもメリットとして挙げられる。
 iPhoneをはじめとするスマートフォンのカメラの性能はここ数年で飛躍的に進化し、「将来的にはスマホ以外のカメラが不要になるのではないか」といった声も聞こえてくるようになった。しかし、「シャッタースピードや露出などの設定を工夫する」「液晶に映った画像と実際に取り込んだデータのギャップを楽しむ」といった「写真を撮るためだけの機械を使う醍醐味」が存在する以上、そうした心配は杞憂なのかもしれない。