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夜中でもドスンドスン、上階から子どもが暴れる音…入居半年で引越しを決意 違約金支払う必要はある?

2024年05月28日 09:40  弁護士ドットコム

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なかなか解決しないマンションの騒音トラブル、どうしたらよいのでしょうか。


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弁護士ドットコムには、「上の階の子どもが走ったり、暴れたりする騒音がひどく、退去することにしました」という人からの相談が寄せられています。



相談者によると、入居直後から騒音があり、日中だけでなく、夜中から夜明けにかけてもドスンドスンと響くそうで、最初は我慢していたものの耐えきれなくなったといいます。



相談者は、管理会社に何度も相談して、管理会社から上の階の入居者に注意をしてもらいましたが、まったく効き目はありませんでした。また、入居者同士のトラブルを避けてか、管理者会社は全ての部屋に手紙という形で注意喚起するといって、直接の注意を断られたこともあったそうです。



結局、騒音で「とても住める状態ではない」と判断、入居から半年で引越しすることにしたそうです。しかし、相談者は「賃貸借契約の違約金を払うのは納得いかない」といいます。



相談者に早期解約の違約金を支払う義務はあるのでしょうか。不動産トラブルに詳しい秋山直人弁護士に聞きました。



●「受忍限度」を超えていれば慰謝料請求も

——そもそも、階下に伝わる子どもの走る音は、騒音として認められるのでしょうか。



マンションは共同住宅である以上、一定の生活音は当然想定されますし、ファミリータイプのマンションであれば、子どもによる生活音も想定されます。



騒音が違法となるのは、いわゆる「受忍限度」を超えると客観的に認められる場合に限られます。「受忍限度」を超える騒音があることは、騒音被害を訴える被害者の側で立証する必要があります。また、騒音を出しているのが上階の住民であることも立証する必要があります(マンションの場合、複雑な音の伝わり方をすることもあります)。



騒音に対する感じ方は人によって異なりますし、これらの客観的立証は、そう簡単ではありません。



——では、「受忍限度」を超えていた場合はどうなるのでしょうか。



「受忍限度」を超える騒音被害があると立証できる場合には、上階の住民が被害者に対して「不法行為」(民法709条)を行っていることになりますので、被害者は不法行為による損害賠償を請求できます。



不法行為による損害賠償請求権に基づき、被害者は、賃貸借契約を解約して引っ越すことを余儀無くされたことに伴う損害として、賃貸借契約の規定に基づいて賃貸人に支払った早期解約違約金や、引越代、慰謝料などを加害者に請求できると考えられます。



慰謝料の金額については、受忍限度を超える騒音の程度・頻度・期間、苦情に対する上階住民の対応の経緯等を踏まえて判断されることとなり、最終的には裁判所が決めることになります。具体的な目安は示しにくいですし、裁判所の慰謝料水準は、市民感覚からすると低めという傾向が否定できません。



●早期解約の違約金自体は否定できない

——賃貸借契約の違約金はどうなるのでしょうか。



ご相談の事案が、賃貸マンションであり、上階も下階も建物所有者・賃貸人は同一の場合、賃貸人には、上階の賃借人を退去させるなどして、騒音のない環境を下階の住人に提供するまでの義務は無いものと考えられます。



賃貸人として、例えば、管理会社を通じて、上階住民に対し、騒音に関する注意を呼びかける等の一定の対応を取ることは必要でしょうが、前記のとおり騒音については立証が難しいこともありますし、住民の行動を強制的に管理することはできないので、賃貸人に上階の賃借人の騒音を止めさせるまでの義務や、退去させるまでの義務を認めることは困難であると思います。



受忍限度を超える騒音が認められる場合、悪いのは当該騒音を出している住民ですから、当該住民が責任を負うべきことがらであり、賃貸人・管理会社に責任追及の矛先を向けるのは、本筋から外れているかと思います。



そのため、ご相談者様が早期解約をする場合、賃貸借契約に基づき、早期解約の場合の違約金を賃貸人に支払う義務があること自体は、否定できないものと考えます。



違約金を支払った上で、上階の住民に対して損害賠償として請求するということになるでしょう。




【取材協力弁護士】
秋山 直人(あきやま・なおと)弁護士
東京大学法学部卒業。2001年に弁護士登録。所属事務所は四谷にあり、不動産関連トラブルに特化して業務を行っている。不動産鑑定士・宅地建物取引士・マンション管理士・賃貸不動産経営管理士の資格を保有。
事務所名:秋山法律事務所
事務所URL:http://fudosan-lawyer-akiyama.com/