なぜ西洋画にはヌードが多いの? ピカソって本当に絵がうまい?……そんな絵画の疑問、ありませんか? 名画がなぜ名画なのかよくわからない、という人も多いでしょう。1年に300件以上の美術展に足を運んでレビューを発信する著者が「名画のひみつ」を解き明かし、おもしろくてためになる絵画の知識を解説する『名画のひみつがぜんぶわかる! すごすぎる絵画の図鑑』(KADOKAWA)より、一部を再編集してご紹介します。
今回の名画は『ヴィーナスの誕生』。
○ボッティチェリ『ヴィーナスの誕生』はなぜマンガチックか?
貝殻やちりばめられた花々、穏やかな表情の人物など、見ているだけでハッピーな気持ちになりますね。ルネサンス文化の中心地フィレンツェに生まれた、サンドロ・ボッティチェリが描きました。
中央に立っているのは、ギリシャ神話に登場する愛と美の女神ヴィーナス。海から生まれて、ホタテ貝に乗ってやってきたという神話の通り、生まれたままの裸の姿え描かれています。周りには、風の神ゼフュロスや時の女神ホーラが描かれ、ヴィーナスを応援しているかのようです。
ボッティチェリは人物の輪郭線をはっきりと描く特徴があり、「線の画家」と呼ばれるほど。くっきりした輪郭線のおかげで、どこかマンガチックにも見えてしまいます。
○■裸を恥じらう可愛いヴィーナス
ルネサンス期に注目された古代ギリシャ・ローマ神話をテーマに描かれました。それぞれに意味を持つさまざまなものが描き込まれており、自分でも調べていくとおもしろいでしょう。
A:時の女神ホーラは、ヴィーナスを祝ってベールを手にして迎え入れています
B:ヴィーナスの首はちょっと長すぎるのですが、絵画的に美しいバランスで描かれました
C:風の神ゼフュロスは、口から風を送って貝殻を騎士に近づけています
D:たくさんの種を作ることから、子孫繁栄の象徴である植物ガマが描かれています
○■ボッティチェリの描いたもう一つの名作
『ヴィーナスの誕生』とセットで描かれたと言われる作品です。中央のヴィーナスの周りに花の女神や樹木の精などが描かれ、背景に描かれたオレンジが実った木々が「繁栄」を表します。
○【豆知識】
ルネサンスとは、15世紀のフィレンツェを中心に始まった文化運動。古代ギリシャローマ文化を見直して取り入れ、この時代に遠近法や明暗法など、西洋美術の基本となる技法も多く確立しました。
次回のテーマは「『ひまわり』はゴッホの幸せな気持ちがあふれた名作だった」です。お楽しみに!
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○『名画のひみつがぜんぶわかる! すごすぎる絵画の図鑑』(KADOKAWA)
著者:青い日記帳 監修:川瀬佑介
「モナ・リザの絵はなぜあんなに有名なの?」「ピカソって本当に絵がうまい?」――そんな“絵画の疑問”、ありませんか? 国内外の美術展の詳細なレビューで圧倒的な支持を誇る著者が、 『モナ・リザ』からバンクシーまで、「名画がなぜ名画と呼ばれるのか」を解き明かす。絵画にまつわるおもしろくてためになる知識を解説する同書は、 AMAZONで好評発売中です。
青い日記帳 監修:川瀬佑介 【著者:青い日記帳】Tak(たけ)の愛称でブログ「青い日記帳」を主宰。1年に300以上の展覧会に足を運んでレビューを行うほか、美術の本質を見極めながら、広くて深くてしなやかな美術鑑賞法発信。「敷居の高かった美術鑑賞が身近になった」「絵の見方がわかるようになった」などと好評を得ている。著書に『いちばんやさしい美術鑑賞 』『 失われたアートの謎を 解く』(ともに筑摩書房)、『カフェのある美術館』(世界文化社)、『美術展の手帖』(小学館)、『フェルメールへの招待』(朝日新聞出版)がある。 【監修:川瀬佑介】国立西洋美術館主任研究員。専門は17世紀を中心とするスペイン・イタリア美術史。企画した展覧会に『カラヴァッジョ』展、『スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた』展など、著書に『マンガで教養 はじめての洋絵画』(朝日新聞出版)などがある。 この著者の記事一覧はこちら(青い日記帳 監修:川瀬佑介)