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名画のひみつがぜんぶわかる! すごすぎる絵画の図鑑 第1回 『モナ・リザ』って何がすごいの? 今さら聞けない“世界一の名画”の謎を解説!

2024年05月27日 07:10  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
なぜ西洋画にはヌードが多いの? ピカソって本当に絵がうまい?……そんな絵画の疑問、ありませんか? 名画がなぜ名画なのかよくわからない、という人も多いでしょう。1年に300件以上の美術展に足を運んでレビューを発信する著者が「名画のひみつ」を解き明かし、おもしろくてためになる絵画の知識を解説する『名画のひみつがぜんぶわかる! すごすぎる絵画の図鑑』(KADOKAWA)より、一部を再編集してご紹介します。



今回の名画は『モナ・リザ』。

○『モナ・リザ』って何がすごいの?



世界一有名な絵画、それはレオナルド・ダ・ヴィンチ『モナ・リザ』でしょう。

口もとに小さな笑みを浮かべ、穏やかに見つめる女性。服装は地味な色合いですが、よく見ると胸元に細やかな刺繍が施こされており、上質なものだということがわかります。頭に薄いヴェールをかけていますが、アクセサリーはつけていません。


このモデルは一体誰なのか。さまざまな貴婦人の名前が取りざたされましたが、確証はありません。衣装や装飾品の少なさもあり、身元を推測しにくいのです。



謎の微笑を浮かべる身元不明の女性というミステリー。人々の想像をかきたて、何世紀も議論がくりひろげられる。これこそが、この作品の魅力かもしれません。



その証拠に、古今東西の画家たちが子の名画を元にした作品を残しています。



ダ・ヴィンチが死ぬまで持っていたこの絵は、それから現在までフランスにあり、ルーヴル美術館内に作られた「モナ・リザの間(国家の間)」に、特別に飾られています。

○■モデルはどんな人か推理してみよう



別名『ラ・ジョコンダ』とも呼ばれる、ルネサンス期の肖像画の最高傑作とされます。ダ・ヴィンチの死後、フランス王に買い取られるなど注目を集めてきました。

○【豆知識】



年間800万人が訪れるルーヴル美術館の中でも、多くの人がつめかける人気の場所が「モナ・リザの間」。約800㎡の広い部屋は、日本のテレビ局の全面協力により作られ、2005年にオープンしました。

○①スフマート技法で表現された輪郭線



「スフマート」とは、イタリア語で“ぼんやりした”という意味。輪郭線は描かず、絵具を何度も重ねていくことで立体感や影を表すテクニックです。人間らしい柔らかさを与える効果もあります。


○②空気遠近法で描かれた背景



背景の山や川は、遠くの景色ほど青みがかって見える空気遠近法で描かれています。これは実際に見た風景ではなく、ダ・ヴィンチの想像で描かれたもの。左右の風景がじつは繋がっていないことで、異世界感があります。

○③じつは未完成。その証拠が手元



多くの技法が使われる構図も工夫されていますが、じつは手元はきちんと描かれていません。つまり、絵全体としては未完成だということ。ダ・ヴィンチはこの絵を死ぬまで自分で持っていて、描き足し続けていたと言われます。

○④3/4だけ正面を向くポーズ



少し斜め向きの「四分の三面観」というポーズで描かれているため、より立体的に見えます。真正面向きだと証明写真のようにきちんとしすぎますが、このポーズのおかげで神秘的な雰囲気になっています。

○同時代のラファエロがいち早く制作



フィレンツェの裕福な商人の妻の肖像画。『モナ・リザ』と似た構図ですが、豪華な宝石や衣装で、描かれた人物がどういう人なのか想像できる描き方になっています。


○体の向きやポーズがそっくり



風景画を多く描いた、19世紀のフランスの画家コローの作品。全体の構図やモデルのポーズは『モナ・リザ』そっくりで、巨匠であるダ・ヴィンチを尊敬して描いたことがわかります。


次回のテーマは「ボッティチェリ『ヴィーナスの誕生』はなぜマンガチックか?」です。お楽しみに!



⇒この連載の一覧はこちら


○『名画のひみつがぜんぶわかる! すごすぎる絵画の図鑑』(KADOKAWA)

著者:青い日記帳 監修:川瀬佑介


「モナ・リザの絵はなぜあんなに有名なの?」「ピカソって本当に絵がうまい?」――そんな“絵画の疑問”、ありませんか? 国内外の美術展の詳細なレビューで圧倒的な支持を誇る著者が、 『モナ・リザ』からバンクシーまで、「名画がなぜ名画と呼ばれるのか」を解き明かす。絵画にまつわるおもしろくてためになる知識を解説する同書は、 AMAZONで好評発売中です。


青い日記帳 監修:川瀬佑介 【著者:青い日記帳】Tak(たけ)の愛称でブログ「青い日記帳」を主宰。1年に300以上の展覧会に足を運んでレビューを行うほか、美術の本質を見極めながら、広くて深くてしなやかな美術鑑賞法発信。「敷居の高かった美術鑑賞が身近になった」「絵の見方がわかるようになった」などと好評を得ている。著書に『いちばんやさしい美術鑑賞 』『 失われたアートの謎を 解く』(ともに筑摩書房)、『カフェのある美術館』(世界文化社)、『美術展の手帖』(小学館)、『フェルメールへの招待』(朝日新聞出版)がある。 【監修:川瀬佑介】国立西洋美術館主任研究員。専門は17世紀を中心とするスペイン・イタリア美術史。企画した展覧会に『カラヴァッジョ』展、『スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた』展など、著書に『マンガで教養 はじめての洋絵画』(朝日新聞出版)などがある。 この著者の記事一覧はこちら(青い日記帳 監修:川瀬佑介)