消費者はそれを知っているから、ゴミ箱に入れる前にペットボトルを洗浄してラベルを剥がし、キャップを取っている。しかし、そこまで手間をかけたことに対して、多少なりとも報酬があってもいいのではないだろうか?と筆者は思う。
そんな疑問に答えてくれるのが、「Plastichero AI Robot」というペットボトル回収機だ。新たな資源回収の手段を提示するこのマシンが、5月15・16日に東京ビッグサイトで開催された「SusHi Tech Tokyo 2024グローバルスタートアッププログラム」に登場。開発元はPlasticheroという韓国企業。同社は2022年に日本でエコセントレジャパン(ecocentre)を設立、すでに事業を展開している。
「仕分け」と「粉砕」ができるペットボトル回収機一般家庭では、100円ショップなどで買える足踏み式のペットボトル圧縮器が使われることも多い。圧縮され、資源ごみとして回収されたペットボトルは回収工場に運ばれ、透明か色付きかに分けられ粉砕される。こうした仕分けは作業員が目視と手作業で行っている。缶や瓶が混ざっていることもあるそうだが、当然それも作業員の手で排除される。
メーカー側が厳格な姿勢を示すようになった今、消費者側も「ペットボトルは資源」であることを改めて認識する必要がある。しかし、リサイクル意識を無理に押しつけると消費者に敬遠されかねない。それを回避しながら消費者に動機付けするため、Plastichero AI Robotにはなんとキャッシュレス決済のポイント還元設計も施されている。
PayPay、au PAY、d払いなどの各種バーコード決済、交通系ICカード、WAON、nanaco、QUICKPayなどのFelicaタッチ決済のポイント還元に対応しているのだ。つまり、やや下世話な表現をすると「ペットボトルをリサイクルに出せば出すほどお金で還元される」のだ。今までポイ捨てしていたような人でも、これを知ったら行動が変わるのではないだろうか。
専用アプリでリサイクル貢献度やポイントを確認・利用Plastichero AI Robot自体がIoT機器なので、具体的な回収量や累計重量、作動状況、CO2削減量なども管制システムがモニタリングしてくれる。利用者はPlasticheroアプリで「自分がどれだけ資源回収に貢献したのか」を実感できる仕組みになっているのも、ひとつの楽しみにつながる。
リサイクル全体で最後のハードルである「出す側の負担軽減」と「資源化までの工程削減」も、Plastichero AI Robotのような回収機の登場で乗り越えられる日も近いようだ。
日本では農協の施設に設置する構想もブースで聞いた話では、日本全国の農協施設にPlastichero AI Robotを設置する構想があるという。
[caption id="attachment_235069" align="aligncenter" width="1274"] 日本のPlastichero AI Robot設置場所は、現時点では首都圏のみとなっている。Image Credits:Plastichero[/caption]大都市圏外や地方都市の住民にとって、農協施設は極めて身近な存在だ。筆者は静岡住まいだが、農家ではない母も何かにつけて近くの農協の施設へ足を運び、直売の野菜を買ってくる。最近では農協に加入しない農家が増えたと聞くが、それでも筆者の身の回りでは、農協は地域住民に大きな影響力を発揮しているという肌感がある。どこに設置したら日本人の生活に浸透するか、新しいものを普及させるためにecocentreがよく研究していることがうかがえる。