2024年05月22日 17:30 弁護士ドットコム
インターネットやSNSの誹謗中傷に直面するクリエイターの保護を目指す団体が5月22日、人気YouTuberやVTuberを多数抱えるUUUM、ANYCOLOR、カバーの3社が参加する「誹謗中傷対策検討分科会」を発足させたと発表した。
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3社はこの日の共同発表で「悪意のある誹謗中傷には断固たる措置を」という考えを示したうえで、クリエイターが安心、集中して活動に取り組める環境を作ることを目指すとしている。
分科会は、一般社団法人クリエイターエコノミー協会の「誹謗中傷対策検討会」の中に設置された。2023年6月に作られた検討会は、誹謗中傷にさらされるYouTuberなどを保護するため、キャンペーンを通じた啓発活動などに取り組んできた。
その活動の中で、誹謗中傷の加害者には、啓発効果の見込める「明確な悪意がなく、誹謗中傷している自覚のないタイプ」と、啓発だけでは不十分な「明確な悪意があり、誹謗中傷の自覚があるタイプ」に分けられることが見えてきたという。
2020年5月23日にプロレスラーの木村花さんが亡くなったことを機に、ネットの誹謗中傷が社会問題として扱われるようになって以降、分科会の3社も、社内に誹謗中傷対策チームを設置した。
3社はこの日、これまでの取り組みをそれぞれ発表。殺害予告や名誉毀損などの投稿に刑事・民事で法的措置をとり、VTuberのプライバシーを侵害した投稿者と300万円の賠償金で示談が成立した実績(ANYCOLOR社)などを明らかにした。
近時のネット上の誹謗中傷対策をめぐっては、発信者情報の開示手続きの迅速化や侮辱罪が厳罰化された。また、5月10日には、改正プロバイダ責任制限法が成立し、プラットフォームに削除申請の窓口整備や手続きの公表などを義務付ける。
UUUM・誹謗中傷及び攻撃的投稿対策チームの責任者、竹川洋志さんは「法的な環境整備も少しずつ整ってきたと思いますが、法改正がゴールではないと思います。SNSプラットフォーム事業者でも、取り組みの濃淡があり、物理的に手が回ってないプラットフォームも散見されます」と指摘した。
クリエイターを抱える企業としても、この数年で誹謗中傷への向き合い方が大きく変わり、社会やメディアも誹謗中傷を大きな社会問題として捉えるようになった ったという。
自社のタレントらが誹謗中傷を受けたときには、「4年前には、静観すればいい。相手にすると喜ぶよと具体的な対策をしてこなかった」と自戒しながら振り返った。
分科会では誹謗中傷に対する知見を共有していく。
分科会の3社に所属するクリエイターもコメントを寄せた。
UUUMに所属するYouTuber、HIKAKIN(ヒカキン)さんは「ネットにおける誹謗中傷の深刻化に伴い、多くの関係者が対策に向けて動いている中で、今回のような取り組みの輪がもっと大きくなり、より多くの方々に知っていただけると嬉しいです」とコメントした。
また、ホロライブプロダクションのVTuber、ときのそらさんは「活動をはじめた当初からたくさんの言葉を投げかけられました。そのほとんどが優しい言葉です。でも中には傷つく言葉もあり、わたし自身、涙をこらえながら活動することもあります。長く活動していてもその気持ちに慣れることは簡単ではありません」とした。
この日の発表会見で、国際大学GLOCOMの山口真一准教授(経済学)は、投稿の際に警告を表示するなど「気づかせる」工夫のほか、「誹謗中傷で訴えられ、人生が滅茶苦茶になる」といったことについて、啓発・教育の促進など、多角的な対策が求められると話した。
なお、この分科会は、総務省、警視庁刑事部、一般社団法人セーファーインターネット協会(SIA)などが後援している。