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巨人・坂本選手が税申告漏れ?「飲食費2000万円」必要経費で計上と報道…認められる可能性あるのか

2024年05月21日 10:30  弁護士ドットコム

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プロ野球巨人の坂本勇人選手が、税務当局から約1億円の申告漏れがあったと指摘されたと報じられ話題となっている。


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デイリー新潮(5月15日)は、坂本選手は毎年の確定申告で約2000万円の飲食費を必要経費として計上し、直近5年で総額約1億円にもなるという関係者の話を紹介している。



巨人側は取材に対し「税務署と協議を続けている」としたうえで、「悪質な申告漏れや所得隠しを指摘されたことは過去になく、今回もそのような指摘を受けておりませんし、修正申告をした事実もありません」と回答したという。



坂本選手の推定年俸は「6億円」とされ、“リッチな食生活”を送っていても不思議ではないが、仮に約2000万円の飲食費を必要経費として申告した場合、認められることはあるのだろうか。税実務に詳しい高橋康夫弁護士に聞いた。



●必要経費でないこと推認できる場合は「納税者が立証する必要あり」

──飲食費などが必要経費として認められるか否かはどのように判断されますか。



一般的に、ある支出が必要経費として認められるためには、以下の2点を満たす必要があると理解されています。



・事業活動と直接の関連性を有し、事業の遂行上必要な費用でなければならない
・必要性の認定は関係者の主観的判断を基準としてではなく、客観的基準に即してなされなければならない



必要経費として認められるか否かの立証責任については、提出された資料等をもとに判断して、支出が必要経費に算入できないことが事実上推認できる場合には、納税者が負うとされています。



その理由として、必要経費の存否に関連する事実に直接関与していない税務署より納税者の方が証拠に近い立場にあること、不存在の立証は困難であること(いわゆる「悪魔の証明」)などが挙げられます。



──近時で飲食費等が必要経費となるかが争われた例としてどのような事案がありますか。



医師が、医院の分院長をスカウトする、取引先及び同業の医師等を接待するなどが目的であったとして、事業所得の金額の計算上、飲食費等を必要経費に算入し、所得税等の確定申告をしたところ、税務署が必要経費に算入できないとして、更正処分を行ったという裁決例があります。



この事例で、国税不服審判所は、次のような理由を挙げて、飲食費等を必要経費として認めませんでした。



・スカウトに関する話はそれがどの程度具体的なものであったか不明で、業務との関連性及び必要性は不明である
・ほとんどは1日で10万円を超える高額な支出であり、1日で10万円を超えることもあった
・3年間の合計では1000万円をも超える支出となっている
・経費明細書等の記載内容からは、業務との関係性が明らかではないだけでなく、客観的にみて業務の遂行上必要な支出であるとまでは認めることはできない
・経費明細書には、接待の内容等として、『引き合わせ』『打合せ』という記載があるのみであり、具体的な引き合わせの目的や打合せの内容が明らかでない
・そもそも、引き合わせ及び打合せが目的であれば、必ずしも接待を伴う飲食店で行う必要はない



●「すべてを必要経費として認めてもらうことはできない可能性がある」

──坂本選手のように、納税者が高収入であることなどは何か影響があるのでしょうか。



関連性及び必要性の認定に当たっては、納税者の収入、社会的地位等も考慮の対象となると考えられますが、上記の裁決例を前提とする限り、高額な支出は必要性、関連性を否定する方向へ働く事情の一つとなることは否定できません。



坂本選手の場合、報道では詳しい事情は不明ですが、業務と関連性があること及び業務遂行上必要な支出であることを明らかにする客観的証拠を提出できない可能性も考えられ、そうすると、すべてを必要経費として認めてもらうことはできない可能性もあると考えます。



なお、本件と異なり、ゴルフプレー代を必要経費として算入できるか否かが争われた事案ではありますが、「納税者が定期的に日曜日にゴルフプレーをすることが多く、配偶者を同伴した代金も接待交際費としていた等の状況に鑑みれば、これらゴルフプレー代等に係る支出は、(必要経費ではなく)私的な消費活動として支出された家事上の経費であると評価できる」と判断した裁決例があります。



必要経費か否かを判断するに当たっては、このような事情も考慮されるということは留意していただいた方がよいと思います。




【取材協力弁護士】
高橋 康夫(たかはし・やすお)弁護士
任期付公務員として税務訴訟を含む行政訴訟の国側の代理人を務め、その後、国税不服審判所の審判官を務める。弁護士業務復帰後は税務調査が入った場合の助言、租税訴訟、税理士に対する損害賠償請求事件(依頼者側及び税理士側)等を担当している。
事務所名:TH総合法律事務所
事務所URL:http://www.ht-law.net/