会社は入ってみないと分からないとはいえ、「ダメな会社」と感じたなら、すぐに辞めるのも一つの道だ。「新卒で入った会社を10日で辞めた」という経験を明かす30代の男性は、9年ほど前に工業系の大学を卒業し、製造業で働き始めた当時をこう語る。
「試用期間中も待遇は変わらないと聞いていたのに、『本採用になるまでは手取り10万円いかないと思うよ』と言われ愕然としました」
驚くことはそれだけではなかった。男性はなぜ、入社早々会社を辞める決断をしたのか。編集部は詳しく話を聞いた。
「全員から『勝手なことをするな。言われた通りにしろ』と怒られ、その後も放置」
「本来、入社して最初に行うのは保険や年金の説明や就労規則等のオリエンテーションだと思うのですが」と振り返る男性。入社直後は、まともな研修もなかったという。
「作業着を渡されて現場へ直行。先輩の作業を『見ていて』と言われて7日間放置されました」
会社は業務用のスチール製品を製造していた。もちろん指示通り見ていたが、当然それだけで仕事が出来るようになるわけもない。
「見ていれば何をやっているかは分かる作業ですが、機械の操作や資材の場所、作業の優先順位などほとんど分かりません。自分から声をかけないと!と意気込んで仕事をしようとしましたが、全員から『勝手なことをするな。言われた通りにしろ』と怒られ、その後も放置です」
いきなり現場入りしたものの、具体的な指導はなく怒られただけ。これではせっかくのやる気も失せてしまう。しかも前述の通り、試用期間中は「手取り10万円いかない」と聞き愕然とした。
「さらに、本採用になるまでは保険や年金は自分で支払ってね、との通達でした。しかも、こちらから確認してやっと教えて貰えたほどです」
新卒入社で正社員採用のはずなのに、これでは非正規雇用と変わりない。いくら試用期間といってもひど過ぎる扱いだ。
「始業の2時間前に出社して機械をあっためといてね」
やっと仕事を教えて貰えたのは、8日目になってからのことだった。ところが、その日の作業を終えた帰り際のこと。社長の息子である専務から、「じゃあ明日からその仕事よろしくね」との指示が出た。何をよろしくされたのかと言えば……。
「機械を動かすのにアイドリングが2時間いるから、始業の2時間前に出社して機械をあっためといてね」
「仕事に慣れるまでは、夜の3時くらいまで仕事終わらないし、土日も出てこないと他の人に迷惑がかかるから、しばらくはよろしくね。たぶん一年くらいで慣れるよ」
「残業代はでないよ」
入社前には聞いていない時間外労働を次々と言い渡されたのだ。専務はこれらを、「当たり前のようににこにこと言ってきました」というから驚きだ。しかし男性のほうも、すでに真面目に受け止める気は失せていた。
「専務の話は、もうダメな会社だと思ったので聞き流していました」
そもそも定時勤務でも手取りが月10万円いかないと、最低賃金を割ることは間違いない。そのうえ早朝から深夜3時まで残業や休日出勤すれば、法律など完全無視の長時間労働になる。その辺は、会社はどう考えていたのだろう。
「そもそも労働契約書を交わす事すらしていませんでした。さらに正月明けから一度も休んでいないスタッフもいたので、労働基準法とか気にしていなかったと思います」
いくら何でも、こんな職場で働き続ける事など出来るはずもなかった。
「即行で退職しましたが、『こんなに根性ないとは思わなかった』と言われ、10日分の給与は貰えませんでした」
給料を払わない理由など、何も言われなかったという。男性は大学で勧められてこの会社に入社したため、こんな思いを語っている。
「親身に勧めてくれた大学には申し訳なかったのですが、すぐ辞めて良かったです。本当のブラック企業って大学も分からないんだなと思いました。今の会社に入って、この会社がどれだけ狂っていたかがよく分かりました」
その後はまっとうな会社に再就職し、違う職種で働いているそうだ。ここまで酷い会社なら、すぐに辞めたことを恥じる必要は全くないだろう。
※キャリコネニュースでは引き続きアンケート「仕事を即行でやめた人」を実施しています。回答ページはこちら https://questant.jp/q/HF78WM9H