フランセスコ・バニャイア(ドゥカティ・レノボ・チーム)は間違いなく、フランスGPの優勝候補のひとりである……はずだった。スプリントレースで、バニャイアに一体何が起こったのだろう。
「わからないんだ。サイティングラップを走り始めてすぐ、おかしな感じがあった。ウオームアップ・ラップでは変な風に7コーナーでワイドになった。スタートをしたら、ひどくウイリーをしてしまって、うまく走るのが厳しい状況だった。7コーナーでワイドになる前、6コーナーでは加速中にフロントが切れ込んでしまって。何かがおかしかった。まあ、こういうこともある」
スプリントレースを2番グリッドからスタートしながらも後退し、最後尾にポジションを下げてピットイン、リタイアしたバニャイアは、何が起こったのかをそのように説明した。ピットインをしたのは、「(走り続けるのが)危険だったから」だという。今季としてはスプリントレース、決勝レースを含めて3度目のリタイアだった。
スタートで大きく後退していたことからホールショット・デバイスのトラブルかとも思われたが、バニャイアはそれをはっきり否定している。「ホールショット・デバイスはちゃんと機能していた」と。トラブルの詳細については語れないが、日曜日の決勝レースに向けてチェックしており、解決するだろう、ということだ。
スプリントレース後、囲み取材にやってきたバニャイアは、いつものように穏やかな表情で淡々と質問に答えていた。もとより、大きく表情を変えることの少ないライダーだ。ただ、声色にはバニャイアの感情が乗っていた。その声はいつもよりも低く、硬かった。
多くは語られなかったが、バニャイアが「午前中にクラッシュしてから、バイクを変えなければならなかった」と言及していることから、乗り換えたほうのマシンで、何かが機能していなかったと考えられる。
予選Q2終盤のアタック中、バニャイアは下り坂からブレーキングで進入する9コーナーで転倒を喫した。「あのクラッシュがなければ僕は同じバイクで走っていて、全部、順調だったはずだ」と、バニャイアはQ2での自分のミスがスプリントレースの不運を呼んだとわかっていた。
とはいえ、Q2のクラッシュとスプリントレースのトラブルを除けば、バニャイアのフランスGPは順調に進んでいた。スペインGPの金曜日に取り組んだ大きな変更が奏功し、それはフランスGPの金曜日走り出しからバニャイアにいい感触を与えている。
バニャイア自身、日曜日の決勝レースに向けて「期待することはトップ2ポジション争いをすること。それができるペースがある。明日に向けて、ポジティブにとらえていきたい」と、ホルヘ・マルティン(プリマ・プラマック・レーシング)との優勝争いに自信を持っていた。日曜日はMotoGPクラスの決勝レースがスタートする14時ごろ、予報では雨が降る可能性があるということだが、大きなコンディションの変化がなければ、バニャイアが雪辱を果たす優勝争いをするだろう。