まずはQ1担当の篠原が1分26秒181でBグループ2番手につけると、Q2グループ1では一度アタックしたユーズドタイヤでタイムが伸び悩むライバルが多いなか、蒲生は1分26秒016をたたき出し、合算タイムでも同じブリヂストン(BS)の2号車muta Racing GR86 GT(堤優威/平良響)を0.067秒逆転しポールポジションを奪取した。
全体の3分の1を迎えてピットウインドウが開くと、上位陣では7番手を走っていた昨年王者の52号車Green Brave GR Supra GTが25周目にピットイン。昨年と同様にGTA-GT300+BSの強みとなるタイヤ無交換の作戦を選んだ。つまり、予選Q1から決勝終了までを1セットのタイヤで走り切ることを意味するのだが、それでも陣営はピットでのロスタイム削減を選んだのだ。これに続くように、同じGTA-GT300規格の2号車mutaも34周目にピットインし、タイヤ無交換でマシンをコースへと送り出した。
チェッカーフラッグの瞬間を迎え、開幕戦を制したのは、最後まで安定したペースを守り抜いた2号車muta Racing GR86 GTだった。昨年のGT300クラスで2位表彰台を3度経験し、シリーズランキングでも2位と悔し涙を流し続けた堤と平良は、体制を継続して迎えた今季初戦を優勝で飾るという最高のスタートを切った。しかし、レース後の平良は「まだまだ、これからです」と冷静だった。彼らが見据えるのは昨年果たせなかったシリーズチャンピオンの座。この岡山ラウンド制覇は、それを実現するための“第一歩目”にすぎないのだということを、このふたりは誰よりも理解している雰囲気がうかがえた。
タイヤの使用セット数削減や新予選ルールの導入で展開に変化が生じるかと思われたGT300クラスだが、終わってみれば“いつもどおり”タイヤ無交換作戦で粘るチームと、タイヤを交換して追い上げていくチームという図式に変わりはなさそう。次戦以降、開催コースやレース距離も変わっていくことになるが、おそらく根本的な戦い方は今までどおりになりそうだ。ある意味で、それを強く感じた2024シーズンの開幕戦だった。ただ、開幕戦の結果を見ると、3位にミシュランタイヤの7号車Studie BMW M4(荒聖治/ニクラス・クルッテン)が入ったものの、4~5位にもブリヂストン勢が入賞。タイヤ交換をしても無交換でもその強さを発揮し、BS勢が上位を独占するかたちとなり、一歩抜きん出ている印象は否めない。