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嘘つき、トラブル多発…仕事のできない後輩を注意したら「パワハラ」と反撃 相手の気持ちだけで認定されるの?

2024年05月08日 10:00  弁護士ドットコム

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相手に明らかな落ち度があるのに、後輩を注意しただけで「パワハラ」になるのでしょうかーー。


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弁護士ドットコムにこんな相談が寄せられています。



相談者によると、その後輩は嘘をついたり、預かり金などの管理が杜撰だったりするためトラブルが多発。上長に何度も訴えたものの、何も改善されず、「仕方なしに私がその都度注意をしていました」といいます。



後輩に面と向かって注意することはほとんどなく、職場で共有すべきことを記入するノートに書いて伝えるようにしていました。直接注意する場合でも暴言や批判は一切していないといいます。



ところが後輩はそれを「パワハラだ」と言い始めたそうです。相談者は「パワハラだと言われて大変ショック」だと感じたものの、念のため、上の役職者に共有ノートを確認してもらいました。すると「まったくの正論でこれがパワハラだというのはおかしいと思う」と言われたそうです。



「相手の気持ちや上長の判断だけでパワハラになってしまうのでしょうか?」と困惑しています。このような相談者の行為はパワハラにあたるのでしょうか。また、相談者はどのように対応すべきでしょうか。小野山静弁護士に聞きました。



●「相手の気持ち次第でパワハラになる」は間違い

まず、「相手の気持ちや上長の判断だけでパワハラになってしまう」というのは誤りです。



パワーハラスメントとは、職場において行われる(1)優越的な関係を背景とした言動であって、(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、(3)労働者の就業環境が害されるものであり、(1)から(3)までの3つの要素を全て満たすものをいいます。



そのため、後輩や部下の言動に問題があって注意・指導した場合、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正なものであれば、パワーハラスメントには該当しません。



他方、たとえ後輩や部下に問題行動があった場合であっても、部下の人格を否定するような言動など業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであれば、パワーハラスメントに該当します。



長時間にわたって厳しい叱責を繰り返したり、他の労働者の面前で大声で叱責をしたりするのも、業務上必要かつ相当な範囲を超えていると見られる可能性があるため注意が必要です。



●後輩の問題行動には上長と情報共有しながら対応

相談者は、後輩に面と向かって注意することはほとんどなく、職場で共有すべきことを記入するノートに書いて伝えるようにしていて、直接注意する場合でも暴言や批判は一切していないとのことです。



これが事実であれば、業務上必要かつ相当な範囲を超えたパワーハラスメントにはあたらないといえます。



今後も後輩の問題行動が続くようであれば、上長や上長の上の役職者と状況を共有し、その内容や頻度を考慮しながら、注意・指導を行っていくことが重要です。



場合によっては、上長から注意・指導を行ってもらうよう要請することも必要だと思います。




【取材協力弁護士】
小野山 静(おのやま・しずか)弁護士
1982年生まれ。弁護士。旬報法律事務所所属(http://junpo.org/)。ブラック企業被害対策弁護団、労災保険男女差別違憲訴訟弁護団などに所属。労働事件、民事事件一般、家事事件、刑事事件などを手がける。
事務所名:旬報法律事務所
事務所URL:http://junpo.org/labor