つまり、医薬品に例えるとTunedの補聴器は「処方せん医薬品」ではなく「市販薬/OTC医薬品」にあたる(OTCは「Over The Counter」の略で、ドラッグストアなどでカウンター越しに薬を販売することに由来)。Tunedのように補聴器の導入コストを大幅カットして業界に変革を起こす企業は、「OTC補聴器企業」と呼ばれているのだ。
半世紀以上も変化のなかった業界に打ち込まれた楔オーディオロジストによるチューニングという要件は、補聴器の購入・販売・普及における妨げともなっていたという。上述のCTEC記事では、市場の9割近くを占める大手補聴器メーカーについて、Tuned社CEOのGavish氏も「OTC補聴器の普及に長らく抵抗してきた」と述べている。
両耳で平均4600ドルする処方せん補聴器に対してOTC補聴器は両耳で平均1600ドル、最低価格はなんと99ドル(National Council on Aging調べ)という安さだ。安価で入手が容易なOTC補聴器市場は、今後飛躍的な成長が見込まれている。日本では2024年から大手スターキーの最先端AI補聴器が販売開始された。超高齢化社会にもかかわらず補聴器普及率が15.2%(JapanTrak 2022調査報告)と欧米に比べて低い日本は、巨大な潜在市場に違いない。