みんなが大好きな寿司ネタ、サーモン。今年1月に(株)しんげんが行った『回転寿司ネタ人気ランキング』の調査でも、2位のマグロを大きく離して1位に輝いている。
そんな流れの中、サケやマスを独自に交配してブランド化した「ご当地サーモン」が、全国で100種以上も存在している。しかし、過熱するブームに冷や水を浴びせるようなニュースが報じられたのだ。
「昨年12月に、山形県のご当地サーモン『ニジサクラ』の養殖用の幼魚、約1000匹が、鶴岡市の赤川支流に放流されていたことがわかったんです」(全国紙記者)
養殖業者からの引き取りキャンセルで、水槽の許容量が限界に達する可能性が出たため、やむなく放流したという。
自然環境への影響は?
このような人工的に作られた魚について水産庁は放流を行わないように要領を定めていた。しかし、生態系への影響が確認されないとして、'22年に廃止している。
ただ手放しで放流がOKになったわけではなく、都道府県に適切な管理を求めているという。
人工的に作られた種を放流して、自然環境に悪影響はないのだろうか? もともといる種と自然交配し、また違う種が生まれてしまう危険性などは?
「その可能性はありません」
と、答えてくれたのは、『ニジサクラ』を開発した、山形県内水面水産試験場の担当者。
「今回放流された幼魚はすべてメスですが、卵巣が発達せず、成熟しません。なので生殖能力がなく、ほかの種と交配されることはありません」(担当者、以下同)
“ご当地サーモン”のメリット
放流された魚は時間とともに減少し、自然環境の中で増える心配はないという。ただ、
「自然環境の中で飼育したことがありませんので、どんなものを餌にするのか、川にとどまるのか、それとも海まで下りるのか。そういったデータがありませんので、これから先どうなるかは、まったくわかりません」
この『ニジサクラ』が誕生したのは、'17年。ニジマスとサクラマスを交配させたものだという。
「成長が早く飼育しやすいニジマスと、味がおいしいサクラマスをかけ合わせる、というコンセプトです」
味としてはニジマスより臭みがなく、脂のりと食感がよくうまみがあるのだという。
ご当地サーモンが、各地で作られている理由を聞いてみると、「私見ですが」と前置きしつつ、
「旅館や地域の飲食店で、お客さんに“これはどこの魚?”と聞かれたとき、この土地でしか食べられない魚ですよ、地産のものですよと言えますよね。そういったことがメリットのひとつだと思います」
確かに輸入物を提供するより、地産地消の料理のほうが喜ばれることは当たり前。しかし、その取り扱いを間違えればその地域の環境を壊してしまう可能性も孕んでいる。今回の幼魚の無断放流は、過熱しているご当地サーモンの開発に一石を投じるニュースになるのかも。