2024年04月27日 09:10 弁護士ドットコム
妻の体調が悪いにもかかわらず、自分の性欲を優先させて、夫婦生活を強要する夫…。こうした行為は、「性的DV」に該当することもあります。
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弁護士ドットコムにも「性的DV」に悩む妻からの相談が寄せられています。
ある女性は、肺炎が完治していない時に夫婦生活を強要されたそうです。途中で呼吸がつらくなり、無理だと伝えたにもかかわらず、夫は女性が入院している間、我慢していたからという理由で、止めてくれませんでした。
また、その後も子どもが寝た後、午前2時、3時に起こされて夫婦生活を求められました。最初は応じていたものの、寝不足と体調不良で限界を感じたという女性。行為中に女性が泣いて呼吸困難になっても止めてくれなかったとうったえます。
こうした夫婦間の性的DVは離婚事由になるのでしょうか。その際、妻は夫に慰謝料請求はできるのでしょうか。河内良弁護士に聞きました。
——女性は夫婦生活について、「夫からの愛情の証であり、浮気をされない妻は幸せ者なのだ」と言われ続け、拒否させてもらえなかったといいます。女性はこうした夫の行為を「性的DV」なのではないかと疑問を持っているそうです。
配偶者間での性的接触が、どのような場合に不法行為といえるかと考えると、今日においてこれは比較的明確であるといえます。すなわち、「一方当事者の同意がない性的接触」は、不法行為と言ってよいと考えられます。
明確な拒否をしていない場合に、同意があると誤信したとか、黙示的に同意したという論理が成り立つことも考えられますが、今回のように明確に拒否の意思を告げているのに継続されたようなケースでは、かつての強姦罪が不同意性交罪に改められた経過も併せ考えると、不法行為にあたるといえます(立証の問題は残ります)。
——この女性が夫と離婚して慰謝料請求することは可能でしょうか。また、「性的DV」は、家庭内で起きるために、証拠が難しいと思われます。どのような証拠があったら、「性的DV」と認められるのでしょうか。
配偶者間であっても、同意のない性的接触を行うことは、一方配偶者を被害者、他方配偶者を加害者とする不法行為です。性的接触の強要は、離婚事由・慰謝料請求事由として主張することは可能であると思われます。
強要の過程を録音・録画するというのが最も効果的な証拠だと考えられますが、他にも、5W1H(いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どのように、という情報)を具体的かつ明確に記載した日記をつけるなどしておくと良いのではないでしょうか。
【取材協力弁護士】
河内 良(かわち・りょう)弁護士
大学時代は新聞奨学生として過ごし、平成18年に旧司法試験に合格。平成28年3月に独立した。趣味はドライブと温泉めぐり。
事務所名:河内良法律事務所
事務所URL:http://www.kawachiryo-law.jp