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他候補者に「おい売国奴」拡声器で罵声、「凸」と称して迷惑行為も…東京15区補選で何が起きているのか

2024年04月23日 17:50  弁護士ドットコム

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4月28日に投開票される東京15区補選で「選挙妨害」とも言える凶行が繰り返されている。


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この選挙に出馬しているつばさの党の候補者たちによるもので、他候補の街頭演説に重ねるように拡声器で大声を張り上げるなどしており、有権者が演説の内容を聞き取ることができなくなるなどの実害も生じている。



一方、選挙期間中の候補者による活動であることから警察が取り締まりにくい現状もあり、不測の事態にどう対処するかが問われている。(ジャーナリスト・宮原健太)



●候補者に対して「おい売国奴」罵声を浴びせ

「おい売国奴」「今すぐ立候補を取り下げろ」「いい加減にしろよ」「逃げんな」



江東区で実施されている東京15区補選の街頭演説で、候補者に対して拡声器を使って罵声を浴びせる光景が何度も目撃されている。



この選挙に出馬している、つばさの党の根本良輔候補、同党の黒川敦彦代表らによるもので、彼らは他候補の街宣の場に乗り込み、演説に対して大声で批判を重ねる手法を展開。トラブルを引き起こし、暴力沙汰まで発生している。



加えて、他候補の選挙カーを自分たちの選挙カーで追いかけまわして邪魔をするような行動も繰り返しており、それらを「凸」「カーチェイス」などと称してYouTubeなどにアップして拡散しているのだ。



こうした中、他陣営はつばさの党からの襲撃を受けにくくするため、街頭演説の日時や場所の事前告知を控え、有権者が候補者の演説にアクセスしにくい状況にもなってしまっている。



つばさの党によるこれらの行動は選挙活動というよりも、他候補の選挙妨害といえ、実際に警視庁は18日、黒川氏らに公職選挙法違反の警告を出した。しかし、その後もつばさの党は同じような行動を繰り返しており、選挙戦は収拾がつかない状況に陥っている。



念のため付言しておくが、選挙戦において他候補の批判をするのは何ら問題ない。



また、選挙演説に支障をきたさない程度のヤジは言論や表現の自由として認められている。



例えば、2019年に札幌市で安倍晋三首相(当時)に対して「増税反対」などとヤジを飛ばした市民が警察によって排除された事案については、北海道警側に違法性があったとして損害賠償を命じる判決が札幌地裁、札幌高裁で出ている。



だが、つばさの党の候補者らによるものは、聴衆が演説内容を聴き取れなくなるほどの騒音で、表現の自由からは大きく逸脱していると捉えられるだろう。



●「つばさの党」とは何者か

そもそも、このつばさの党の人たちは一体何者なのか。



もともとは2019年の参院選に向けて結成された「オリーブの木」という政治団体に由来している。



党名はイタリアにおいて中道左派勢力を結集して作られた政党連合に由来しており、これまでバラバラに活動していた政治勢力を1つにまとめることで国政選挙に候補者を当選させ、国民のための政策を実現することを目的としていた。



そこに参加したのが元衆院議員の小林興起氏、新党憲法9条代表で元外交官の天木直人氏、そして現在のつばさの党の代表を務める、市民団体「今治加計獣医学部問題を考える会」共同代表の黒川氏だった。



新たな政治の動きを作るために互いの主張の違いを乗り越えて連携する、ある意味で寛容さも兼ね備えたような政党でもあったわけだが、しかしそれは主張の分かりにくさとなり2019年参院選では得票率0.3%と低迷。



一方でこの選挙では主張を先鋭化させた、いわゆるワンイシュー政党とも言えるNHKから国民を守る党(当時)やれいわ新選組が注目を集め、初めて議席を獲得した。



筆者は当時のこの選挙における経験が、現在のつばさの党の暴走に繋がっているのではないかと見ている。つまり、主張を尖らせることによって注目を集め、国会議員を誕生させるという他党の成功例を追いかける中で、現在の過激な行動に行きついてしまったわけだ。



オリーブの木はその後も活動を続けるが、選挙を前後して小林氏、天木氏が離脱し黒川氏の個人政党と化して、つばさの党に党名を変更。一時期はNHK党と連携して黒川氏が同党幹事長に就任していたこともあったが、現在は関係を断って独自に活動している。



●犯罪ではない? 候補者を出しているが故「無敵の人」状態に

このように、結成当初とは様変わりしてしまったつばさの党だが、彼らがやっている選挙妨害は犯罪にはならないのか。



これは公職選挙法225条に「選挙の自由妨害罪」というものがあり、候補者に暴行を加えたり、交通や集会、演説を妨げたりした場合には4年以下の懲役もしくは禁錮、または100万円以下の罰金と定められている。



警視庁が18日に出した公選法違反の警告は、この条文によるものと見られる。



一方でつばさの党の候補者らは警告を出された後も選挙妨害を繰り返しており、それに対して警察も対応に苦慮する事態が続いている。



というのも、この選挙自体につばさの党の根本氏が立候補しているため、彼らは候補者や応援弁士による演説として拡声器などを使うことが認められているのだ。   それでも他候補の演説を妨害すれば公選法違反になるのだが、警察は捜査が選挙に影響を与えないよう、選挙期間中は候補者に対する強制捜査や立件を控える傾向がある。



こうしたことも見越してか、黒川氏は警告を受けて城東警察署内でノートを投げるなど暴れまわり、その様子もYouTubeにアップしている。一般人であればすでに逮捕されていてもおかしくないのだが、候補者を出しているが故にもはや「無敵の人」となっているわけだ。滅茶苦茶である。



●民主主義が一部の暴走した人たちによって破壊されかねない

このような事態について、ついに国会でも議論の俎上に上がった。



22日、衆議院予算委員会で国民民主党の田中健衆院議員が選挙妨害について「候補者の演説を聞きたい有権者の権利も奪うことになり、民主主義の危機。何らかのルールが必要だ」と取り上げ、岸田文雄首相は「何らかの対策が必要ではないか、問題意識は共有する。各党各会派で議論すべき課題だ」と答弁した。



今後、選挙妨害に対してより機動的に対応できるようにするため、公職選挙法の改正なども議題となっていくかもしれない。



現在は好き勝手な行動をとり続けているつばさの党だが、選挙が終われば警察が捜査を本格化させる可能性もある。



選挙で各候補者が何を訴えているのかを知るために、有権者が街頭演説を聞きに行く、こうした当たり前の活動を守っていくためにも、警察は常軌を逸した選挙妨害を厳しく取り締まっていく必要があるだろう。



民主主義が一部の暴走した人たちによって破壊されないためにはどうすれば良いのか、根本から考えることが求められている。