トップへ

並盛り注文も「大盛りお待たせ!」そのまま食べちゃった…これって犯罪?

2024年04月21日 09:30  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

そば店で並盛りを頼んだら大盛りが出てきたのでそのまま食べてしまったけど問題ないか──。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。


【関連記事:「何で全部食べちゃうの!?」家族の分の料理を独り占め 「食い尽くし系」の実態】



相談者は食券を買って注文しましたが、そばを出された際、「大盛り、お待たせしました!」と言われ驚いたそうです。



見た目では並盛りか大盛りか判断がつかず、一度は店員に声をかけようと思ったものの、店に行列ができていたこともあり、そのままサッと食べて店を出てきてしまったようです。



頼んでいない大盛りを申告せずに食べてしまったことが気がかりという相談者ですが、何らかの犯罪に当たることはあるのでしょうか。吉田要介弁護士に聞きました。



●明らかに「大盛り」だったら店に知らせる“義務”あり

──並盛りを注文したのに間違って出された大盛りを黙って食べてしまった場合、何らかの犯罪に当たるのでしょうか。



並盛りを注文したのに、間違って出された大盛りを黙って食べてしまったとしても、見た目では並盛りか大盛りか判断がつかなかったのですから、「大盛り、お待たせしました!」というのは店員の言い間違いだと思い、注文と同じ並盛りだと思って食べた場合は、何の犯罪も成立しません。



民事上は、「法律上の原因なく」、大盛りという「利益を受け」ていますので、不当利得の返還義務を負いますが、気づかなかった場合は、「その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う」(民法703条)とされています。食べ終えていれば、利益は残っていないといえるので、何の返還義務も負わないと思われます。



──明らかに「大盛り」だとわかったものの、そのまま食べた場合はどうでしょうか。



注文と違う商品がきた場合、客には注文と違うことを店員に告知する信義則上の義務があります。その義務に違反することから、「人を欺いて財物を交付させた」として詐欺罪(刑法246条1項)が成立する可能性があります。



民事上も、「法律上の原因なく」、大盛りという「利益を受け」ていますので、不当利得の返還義務を負い(民法703条、704条)、並盛りと大盛りの代金の差額を支払わなければならない可能性があります。



──「大盛り、お待たせしました!」が単なる言い間違えで、出されたそばが正しく並盛りだった場合はどうでしょうか。



注文と違う商品が来ていない以上、告知義務はなく、当然、告知義務違反もありませんから、詐欺罪は成立しません。民事上も、大盛りという「利益」を受けていない以上、不当利得の返還義務も負わず、差額の支払義務もありません。




【取材協力弁護士】
吉田 要介(よしだ・ようすけ)弁護士
千葉県弁護士会所属。日弁連子どもの権利委員会事務局次長、千葉県弁護士会刑事弁護センター委員。法律を「知らないこと」で不利益を被る人を少しでも減らすべく、刑事事件、少年事件、家事事件、一般民事事件等幅広く手がけ、活動している。
事務所名:ときわ綜合法律事務所
事務所URL:http://www.tokiwa-lawoffice.com