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スーパーの焼き鳥1本600円!なのに完売?「麻布台ヒルズ」で味わった異次元の衝撃

2024年04月21日 06:20  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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麻布台ヒルズにあるスーパーのお惣菜コーナーで「焼き鳥が1本600円」で売っていたという投稿がXで話題を集めた。投稿したユーザーは「こんな高級スーパーが日常生活な人達が東京にはいるんだね」「魔界すぎる」と驚きを綴っていた。

確かに、日常的に1本600円の焼き鳥を食べる人たちばかりが集う場所なら、もはや一般市民にとって「魔界」だろう。その「麻布台ヒルズ」とは、いったいどんな場所なのだろうか? 現地へ向かい、確かめてみることにした(文:昼間たかし)。

「麻布台ヒルズ」は、どんな場所?

庭園部分は開放的な雰囲気。六本木ヒルズよりも格段にさわやかな雰囲気だ

「麻布台ヒルズ」は、東京・港区に位置する複合施設で、昨年11月に誕生したばかり。その中心となる麻布台ヒルズ森JPタワーはオフィス・商業施設・住宅が入る日本一高い超高層ビル(高さ325メートル)だ。54階~64階が超高級タワマンで、最上階の販売価格は200億円以上と報じられている。その他にもビルがいくつかあり「麻布台ヒルズマーケット」は、それらを支える「スーパー」という位置づけである。

しかし、一歩足を踏み入れると「ここは本当にスーパー?」と言いたくなる雰囲気が漂っていた。スーパーというより、専門店が軒を連ねるデパ地下のイメージに近い。たとえば、野菜・果物売り場は、老舗の「京都八百一」。肉や魚を販売している店もそれぞれ専門店の看板を背負っている。

「惣菜コーナー」とは言うものの、実際は専門店街

惣菜コーナーも実際に行ってみると、そこは有名店がずらりと並ぶエリアだった。1本600円の焼き鳥を売っていたのは、目黒にある焼き鳥の名店「鳥しき」のテイクアウト専門店。目黒の本店は2011年にミシュランで一つ星を獲得し、現在まで星を維持し続けている、国内有数の予約困難店だ。

すぐ横にはイートインができる分店「鳥おか」もあって、こちらは食べログによると完全予約制で1万7600円のコースしかない。ひええ。こうなると急に「1本600円で買えるなら食べてみようかな」と思えてくる……。

まさかの売り切れ

ところがなんと! 焼き鳥の皿に書かれていたのは、まさかの「完売しました」。しかも、ものの見事に全種類が売り切れていた。店員さんによると、焼き鳥は1日に5回陳列しているのだが、筆者は運悪く完売したところに到着してしまったそうだ。それにしても「1本600円の焼き鳥」が完売するなんて……。いったいどんな人が買っているのだろうか?

店員さんに聞いてみると、親切に「最近は観光客の方がたくさん買ってくれますね。インバウンドの方も目立つ印象です」と教えてくれた。なるほど、オープンして間もない麻布台ヒルズは都心の「観光スポット」になっている。取材に訪れたのは平日だったが、大勢の観光客らしき人たちで混み合っていた。ディオールやエルメスのような高級ブランドショップ、全国指折りのレストラン、東京タワーを望める中央広場など、国内外の観光客を惹きつける要素は十分にある。

庶民の味方「亀戸ぎょうざ」があるじゃないか!

筆者が焼き鳥を買えずに落ち込んでいると、その目に「亀戸ぎょうざ」という文字が飛び込んできた。これは下町情緒たっぷりの街「亀戸」にある有名店では? ちなみに本店は餃子とドリンクしかメニューがなく、席に座ると「ストップ」と言うまで延々と焼き立て餃子が出てくる一風変わったシステムの店で、週末は常に酔っ払いのオッサンたちが集っている。

店員さんによると、麻布台ヒルズマーケット支店はテイクアウト専門で、こうしたテナントスタイルでの出店は初めてらしい。店員さんは「箱代とかでちょっとお値段が違うんですけど……」と、なぜだか少し申し訳無さそうにしている。

こちらもインバウンド客に人気とのこと

なるほど本店に比べれば、値段がちょっと高い。本本店は一皿5個で300円(税込)だが、麻布台ヒルズ価格は12個入りパックが972円(税込)。つまり本店が1個あたり60円なのに対して、麻布台ヒルズでは1個あたり81円となっている。価格差はイートイン・テイクアウトの違いやテナント料の差、「箱代」などを合わせれば結果的にこうなるのだろう。

こちらの店でも客層を聞いてみると、やはり「観光・インバウンド客」ということだった。インバウンドの人たちは「すぐに食べられるから」とたくさん買う人が多いらしい。筆者もせっかくなので2箱購入したが、意外にも支払いは売り場カウンターではなく、離れたところにある「レジカウンター」で行うシステムだった。袋詰めもセルフなので「あ、こういうところはスーパーっぽいな」と意識させられる。

これは「魔界」でいい?

さて、元の疑問は解消できたわけだが、実態を知ると、ここを「魔界」と呼んでいいのかわからなくなってきた。

もちろん、麻布台ヒルズのマンションは軒並み1億円超えだし、最高200億円レベルの住宅が売れるぐらいだから、焼き鳥がいくらでも関係ない「魔界の人たち」は間違いなく住んでいるはずだ。しかし、マーケットの惣菜コーナー店員に聞いても、よく買う顧客は「観光客やインバウンド」の人たちで、周辺住民・常連客への言及はほとんどなかった。そうなると、1本600円の焼き鳥を「日常的に買う」という人は、想像よりも多くないのかもしれない。ちなみに周辺には意外とマンション・住宅があるので「マルエツプチ」「まいばすけっと」などの都心型スーパーや個人商店(八百屋)が存在する。

麻布台ヒルズマーケットにも、亀戸ぎょうざのような大衆店が入っているし、野菜など個別の商品価格では一般のスーパーと変わらない(むしろ安い)ものもあった。うーん。全体的に高級なのは間違いないが、これを魔界と呼ぶなら、都心のデパ地下も軒並み「魔界」になってしまいそうだな……。みなさんはどうお考えだろうか?