動物と暮らしている人のなかには、ときたま信じられないような不思議な体験をする人もいるようだ。熊本県に住む40代前半の女性(教育・保育・公務員・農林水産・その他/年収450万円)は、飼っていた猫にまつわるこんなエピソードを回想した。
「親が別居し私も、母のアパートに出なければいけなかったのですが、動物禁止のアパートだったため、実家で飼っていた猫を置いて出なくてはいけませんでした」
苦渋の決断をした女性に、このあと不思議な体験が起こる。(文:真鍋リイサ)
「虫の知らせかな?と思い、すぐさま実家に帰ると…」
猫を実家に置き去りにして1か月ほど経った。アパートで寝ていたら……
「私の足元の布団の上に猫が乗ってきて、体の上をゆっくり登ってきて、私の顔の匂いを嗅いで、まだ私もそのアパートに来て間もないし、寝ぼけていたため『あぁ、また布団の中で寝たいのか』と思い布団を開けてあげたのですが、入ってくる様子もなく、頭の上の方に行ってしまいました」
寝ぼけていた女性は、アパートにいるはずのない愛猫の気配を感じ、布団に招き入れる仕草をした。実家ではよくあることだったのだろう。「目を覚ますと、そこは猫がいる実家ではなく、母のアパート」と愕然とした女性。そして急に胸騒ぎがしたようだ。
「虫の知らせかな?と思い、すぐさま実家に帰ると、祖父が私の顔を見るなり走ってきて、『今朝、猫が車に跳ねられて亡くなった』と」
なんと猫が亡くなっていたというのだ。女性が感じた虫の知らせは、悲しいことに当たってしまった。
「家から出たこともなく、車を見るのも怖がる猫が、車の交通量の少ない朝方家から抜け出し、血の一滴もこぼさず、綺麗な姿で亡くなっていたそうです」
一度も外へ出たことがない臆病な猫が、この日家を出たのは、女性を探すためだったのだろうか。真相はわからないが、いずれにしても猫はもうこの世におらず、もう二度と会えないのだ。女性は、自らの行いを悔やんでも悔やみきれないだろう。
「きっと、ついて行きたかったろうし、寂しかったのでしょう。そして、最後の挨拶に来てくれたんだなと今でも思います。今でも悔やまれてなりません」
せめて夢の中で猫がお別れを言いにきてくれたと女性は思いたいのかもしれない。しかし、人間の都合で振り回された猫の話を美談にするのは、いかがなものだろうか。
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