トップへ

漫画村運営者に約17億円の損害賠償金支払い命令、出版3社は「主張が概ね認められた」

2024年04月18日 21:30  コミックナタリー

コミックナタリー

記者会見の様子。
マンガの海賊版サイト・漫画村の運営に積極的に関与していた男性に対し、本日4月18日に東京地方裁判所は17億3664万2277円の損害賠償金の支払いを命じる判決を言い渡した。同じく本日、本件に関して共同提訴していたKADOKAWA、集英社、小学館の3社が記者会見を行った。

【大きな画像をもっと見る】

2016年に開設された漫画村は、2018年に月間アクセス数が1億を超え、社会問題化した海賊版サイト。2019年9月に運営者の男性が逮捕され、2021年6月には懲役3年、罰金1000万円、追徴金約6257万円の有罪判決を受けた。2022年7月、KADOKAWA、集英社、小学館の3社が、漫画村より受けたと推測される損害の一部である総額19億2960万2532円の賠償を求めて提訴。漫画村ではマンガの単行本や雑誌はもちろん、写真集や文芸作品などさまざまな出版コンテンツ約8200タイトル(約7万3000巻相当)を掲載していたとされるが、今回の提訴の対象は原告の3社(KADOKAWA、集英社、小学館)が発行した計17作品となる。17作品は漫画村に掲載されていた作品の中から、巻数が多いものなどが選定された。なお17作品のリストは記事末に記載している。


原告代理人の中川達也弁護士は「裁判所は被告の責任を明確に認めたうえで、被告に対し総額約17億3000万円の損害賠償を命じました。この金額は日本の著作権侵害訴訟で支払いが命じられた額としては恐らく過去最高額とみられます」とコメント。さらにKADOKAWAが8作品で4億円、集英社が2作品で4億3000万円、小学館が7作品で9億円と各社の損害額の概数を伝えた。

集英社の編集総務部参与である伊東敦氏は、3社のコメントを通読。「当時最大規模であり海賊版サイトの象徴でもあった『漫画村』に関し、刑事処罰を求めるのみならず、民事上生じた責任を追及することは、著者が安心して創作できる環境を整え、心血を注いで生み出された作品を預かる出版社の責務であることから、原告3社が共同して提訴いたしました」と訴訟の意義に言及し、「本判決において原告3社の主張が認められ、原告3社の17作品に限ってもその損害額が17億円強と判示されたことは妥当なもの」と、原告の主張が概ね認められたとの考えを示した。

中川弁護士は「今回の裁判で、被告(漫画村の運営者)は『自身の行為が著作権法上の侵害に当たらないこと』『時効がすでに完成していること』を主張していた」としつつ、「裁判所はその主張を排斥し、権利侵害にあたるという判断をした」と語る。17億円強の賠償について、回収の見込みを聞かれると「具体的な回収の手法は言及を控えさせていただくが、時間がかかっても回収に努める」と回答。「まだ本判決は確定したわけではなく、被告を含めて控訴の可能性があります。さらにあくまで回収に努めるのが私たちのスタンスなので、漫画村に関してこの判決が区切りというわけではない」とコメントした。

また伊東氏は「刑事告発からこの民事に至る過程でメディアに報じられ、世の中に広く周知されました。その結果、一部のネタバレサイト、SNSへの無断アップロードなどは継続して存在していますが、我々が認知している限り国内発の海賊版サイトに関してはほぼ根絶できた」と、日本国内に関しては権利侵害に対する抑止力となっていることを強調。しかし「相変わらず非常にひどい状態の海外の海賊版サイトにおいても、きちんと対応していくのが出版社の務め」と声に力を込めた。

■ 損害賠償請求における17作品
□ KADOKAWA
「オーバーロード」「ケロロ軍曹」「賢者の孫」「盾の勇者の成り上がり」「トリニティセブン 7人の魔書使い」「ヒナまつり」「僕だけがいない街」「無職転生 ~異世界行ったら本気だす~」

□ 集英社
「キングダム」「ONE PIECE」

□ 小学館
「黄金のラフ」「カノジョは嘘を愛しすぎてる」「からくりサーカス」「ケンガンアシュラ」「黄昏流星群」「ドロヘドロ」「YAWARA!」

■ 原告3社の共同コメント
 当時最大規模であり海賊版サイトの象徴でもあった「漫画村」に関し、刑事処罰を求めるのみならず、民事上生じた責任を追及することは、著者が安心して創作できる環境を整え、心血を注いで生み出された作品を預かる出版社の責務であることから、原告3社が共同して提訴いたしました。
 「漫画村」により出版コンテンツに生じた甚大な損害は今なお深く、その全てを回復することはできませんが、本判決において原告3社の主張が認められ、原告3社の17作品に限ってもその損害額が17億円強と判示されたことは妥当なものと考えております。
 原告3社は海賊版サイトを通じた権利侵害に対する大きな抑止につなげるべく提訴いたしましたが、本訴訟は改めて海賊版サイトの問題を広く訴える契機になりました。出版社は、国内のみならず、未だに深刻な被害が生じている国外においても同様の権利行使を行うなどして、作品を守り抜くため、今後も侵害に対してあらゆる手段による対策を講じてまいります。

■ ACCSコメント(一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会)
 海賊版サイトの運営に対して民事上の責任が生じることが示されたことは、同種事犯防止の観点から当然の判決であると考えます。
 権利者は海賊版サイトを通じて対価を全く得ることはできません。適正なサイトやアプリを通じて楽しんでいただくことが何より重要であり、改めて「海賊版サイトにアクセスしない」「海賊版サイトを利用しない」よう強く呼びかけます。
 今後も、会員による権利行使の支援や著作権普及を通じ、侵害抑制につながる活動を推進してまいります。