4月1日、芸能プロダクション『A-Team』(エー・チーム)が芸能関係業務を停止すると公式サイトで発表した。同社が出した声明では、会社は存続するとしていたが、芸能プロダクションとしての仕事は停止することになる。
それにともなって、所属タレントの吉岡里帆や臼田あさ美、酒井若菜が退所。一昨年には看板俳優だった伊藤英明、今年1月には松本まりかが退所している。
芸能プロダクションが廃業、閉鎖するのは業界では特に珍しいことではないが、『A-Team』のような30年弱も続いた老舗の会社が営業を停止するのは稀有なことだ。
芸能プロダクションの厳しい現状
同社の場合は社内のゴタゴタが影響しているとの報道もあったが、最近は芸能プロダクションが置かれている状況が大きく変わり、黒字経営のプロダクションは数社しかなく、ほとんどが赤字だという。大きく報道されることはなかったが、人気タレントを多数抱える大手プロダクションが都内一等地に構えていた事務所を地方に移転させたりもしている。地方ではないが、より家賃の低い場所へ移転したプロダクションも何社かある。
最近は、大手でも独立するタレントが増えており、しかも稼ぎ頭と見られている者たちの退所が後を絶たない状況だ。芸能プロダクションにとって大きな痛手となるのは言うまでもない。
タレントが独立する理由の大半は、お金に関して不満が生じるからだというのは、老舗芸能プロ幹部。
「駆け出しのころは、レッスンにお金がかかりますし、送迎用の専用車、場合によっては住居の家賃を持つこともあり、また売り込みにもいろいろとお金がかかります。しかし、人気が出てしまえば、黙っていても向こうから仕事がどんどん入ってきますから、営業などの必要もなくなり、タレントにとって事務所に所属するメリットはぐっと減ります。それにも関わらず、同じ割合でマージンを取られるのが納得できなくなるのは当然のことでしょう」
「看板女優になる」宣言の過去
人気女優となって引く手数多と思われる吉岡なら、独立し個人事務所を設立しても十分やっていけるはずだと思うが……。
「彼女は俳優養成所にいたころ、そのままでは埋もれてしまうと思い、事務所入りを目指して養成所から系列の『A-Team』のマネージャーを紹介してもらい、さらに“ここの看板女優になるから、お願いだから私を今すぐここの事務所に入れて下さい”“めちゃくちゃ働くから、仕事をください”と社長に直談判したのは有名な話です。こういうタイプは事務所としてもありがたいタレントです。事務所の意向に沿った仕事を嫌な顔せずに受けてくれますから。逆に、個人でやっていくことにはまだ自信が持てないのでしょう。事務所に所属しているメリットはいろいろありますが、まず、当たり前ですが仕事を取ってきてくれること。そして“守ってくれる”ということ。マスコミ対応、プロモーションなどの煩わしい業務はマネージャーや会社に任せておけばいいということがありますから、自分は仕事に集中できます」(同・老舗芸能プロ幹部)
新しく所属する『フラーム』は、山口紗弥加や戸田恵梨香、吉瀬美智子、有村架純など人気俳優が所属しているが、業界ではどちらかといえば中堅。しかも最近、看板俳優だった広末涼子が独立したばかり。
「大手の事務所は、タレントが売れてきて仕事がどんどん入ってくるようになれば特に売り込みなどの営業はしなくなるものです。中堅の事務所でも超売れっ子の看板俳優がいれば何とかやっていけますが、それでも途切れなく仕事をしてもらわなければなりません。看板俳優が多ければ多いほどいいのは言うまでもないです。次の看板になる俳優を育てるためにも、自然と営業に力が入ります。タレントにしてみても大手に比べて、手厚いサポートを受けることができます」(同・老舗芸能プロ幹部)
事務所が芸能活動を休止するという予想外の出来事に遭遇してしまった吉岡だったが、“人間万事塞翁が馬”、新事務所移籍は間違いなく吉と出るだろう。