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ジャンプ『東京卍リベンジャーズ』作者・和久井健が新連載  次々と“電撃移籍”を実現させる編集部の戦略

2024年04月12日 07:10  リアルサウンド

リアルサウンド

東京卍リベンジャーズ キャラクター名鑑 REMEMBER YOU!

 講談社の『週刊少年マガジン』で『東京卍リベンジャーズ』を大ヒットさせた和久井健が、集英社の『週刊少年ジャンプ』にて新連載を始めることが判明した。誰もが注目する大物漫画家の“電撃移籍”というニュースに、驚きを隠せないマンガファンが多いようだ。


(参考:【画像】人気キャラ多数の『東リベ』だからできた「オレの地元が最強」ポスター(14種類)


  和久井はデビュー作から現在に至るまで、講談社でキャリアを積んできた作家。デビュー作の読み切り『新宿ホスト』は『別冊ヤングマガジン』2005年8号に掲載され、代表作の『新宿スワン』は『週刊ヤングマガジン』で約8年半にわたって掲載された。


  その後、活動の場を少年誌に移し、『東京卍リベンジャーズ』の誕生に至るのだが、掲載誌は変わらず講談社のままだった。マンガ業界では作家と出版社の結びつきが強いため、移籍のニュースに驚く人が多いこともうなずける。


  とはいえ、最近の『週刊少年ジャンプ』では別の出版社で活躍していた作家の新連載が増えている。たとえば『アオのハコ』を好評連載中の三浦糀は、元々講談社で活動していた作家。デビューのきっかけは「第91回週刊少年マガジン新人漫画賞」の佳作受賞で、2017年から2018年にかけて、『週刊少年マガジン』で『先生、好きです。』を連載していた。


  その後の成り行きは実質的な再デビューに近い印象で、2019年に集英社のマンガ賞である「第4回ガリョキンPro」で準キングを獲得。さらに2020年に、マンガ創作講座「ジャンプの漫画学校」第1期を受講した上で『アオのハコ』の連載を始めている。


  また『約束のネバーランド』の作画担当・出水ぽすかは、元々小学館で活躍していた漫画家だった。しかし完全に集英社に移行したわけではなく、2023年から小学館の『月刊コロコロコミック』にて「ベイブレード」シリーズの新作マンガ『BEYBLADE X』を連載している。


 『Dr.STONE』の作画担当・Boichiもこれに近いスタイルで、集英社での執筆活動と並行して、講談社の『モーニング』や小学館の『週刊少年サンデー』などに作品を発表している。


  さらに本誌ではなく『少年ジャンプ+』では、2月6日よりヤマザキマリの大ヒットマンガ『テルマエ・ロマエ』の続編である『続テルマエ・ロマエ』の短期集中連載が始まったばかり。前作はKADOKAWAの『月刊コミックビーム』で連載されていた作品だったため、こちらも大きな驚きをもって受け止められている。


新たな才能を発掘するためのシステム


  そもそもこうした動きの背景として、近年の編集部が他社の作家の受け入れに積極的なスタンスを示していることは明らかだ。たとえば『週刊少年ジャンプ』の編集部は、2023年末に他誌での連載経験がある“プロの作家”を対象とした説明・相談会を開催していた。


  どうやら同編集部では近年、『週刊少年ジャンプ』での作品発表を検討しているプロの作家からの問い合わせが増えていたらしく、それに対する応答という意味で、説明会兼相談会の開催に至ったという。


  また『少年ジャンプ+』の編集部も、数年前から「プロ漫画家のためのNEXTステップ」と題して、プロの作家からの持ち込みを不定期で募集している。持ち込み条件は非常にゆるく、他社掲載作でもOK、なおかつ青年誌や少女誌などあらゆるジャンルの作家に門戸を開くというスタンスのようだ。


  ひと昔前にはこの逆で、『ライジングインパクト』の鈴木央や『シャーマンキング』の武井宏之など、『週刊少年ジャンプ』から他社の雑誌に移って活躍する作家も多かった。おそらくその背景には、誌面の掲載スペースが限られているため、連載枠をめぐる過酷な競争があった……という事情が関係しているだろう。


  しかし現在では『少年ジャンプ+』というWeb媒体が定着したことで、作品の掲載スペースがほぼ無限大に拡張されている。だからこそ、編集部が積極的に作家を受け入れようとするスタンスを打ち出すようになったのかもしれない。


  次はどの作家が脚光を浴びることになるのか、今後の『週刊少年ジャンプ』と『少年ジャンプ+』から目が離せない。


(文=キットゥン希美)