2024年04月09日 16:30 弁護士ドットコム
労災保険の遺族補償年金の受給について、妻は年齢不問なのに、夫には妻の死亡時55歳以上という年齢要件を課した労災保険法の規定は、法の下の平等を定めた憲法14条1項に反し、違憲だとして、東京都の男性(54歳)が4月9日、国を相手取った裁判を東京地裁に起こした。
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夫のみに年齢要件があることをめぐっては、最高裁が2017年、地方公務員の規定(地方公務員災害補償法)について合憲判決を下している。
弁護団には、このときの訴訟のメンバーだった弁護士も加わっている。提訴後の記者会見では、規定について「夫は仕事、妻は家事」という「性的役割分担」を維持するものだと批判。最高裁判決当時から「急激に社会が変化している」などとうったえた。
訴状などによると、男性一家は共働きで、妻は2019年に「くも膜下出血」を発症し、51歳で死亡。その後、労災と認定された。
労災保険法が規定する、遺族補償年金の受け取りができる遺族は、労働者の死亡当時、(1)夫なら55歳以上、(2)子どもなら18歳の年度末までの間にあること(同法16条の2、附則43条)。
この一家の場合、男性が当時49歳で、3人の子どものうち対象となるのは中学生の次男だけだった。
一家は2022年、次男を請求人として遺族補償年金を請求。労災が認められたが、次男が18歳になったため、2023年3月31日に受給資格を喪失した。
一家には、遺族補償一次金などと合わせて計約1800万円が支給されたものの、弁護団の試算によると、妻と夫の性別が逆なら、約8800万円(中間利息控除をしても約6200万円)が支給されたはずだという。
男性は2023年、自らを請求人として遺族補償年金を請求したが不支給決定となり、不服申立て(審査請求)も棄却となったため、不支給処分の取り消しを求めて今回の訴訟を起こした。
男性によると、「共同で収入を得て、家事を分担し、子育てにあたってきた」といい、妻のほうがやや年収が多かったこともあり、妻の死後、子ども3人を学校に通わせるために苦労したという。
「共働き世帯が増えているが、労災支給されないとき、家族は大変」「夫が亡くなった場合と妻が亡くなった場合とで、国がおこなう給付の内容が異なるのはおかしい」と提訴理由を語った。
代理人の一人である小野山静弁護士は「一義的には男性差別だが、女性労働者は、男性より少ない補償金しか残せないということでもある」とコメント。女子差別撤廃条約違反の観点からも主張していくという。