2024年04月08日 07:00 リアルサウンド
現在公開している劇場版アニメ『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』は、観客動員数が約259万人を超え、興行収入は31億円にのぼるヒットを記録しているという。根強いドラえもん人気の中で、忘れてはいけないキャラがのび太である。
(参考:【写真】藤子・F・不二雄、生誕90周年を記念したプレミアムな二冊)
のび太は学校の勉強がまったくと言っていいほどできず、テストではいつも0点ばかり。ジャイアンにいつもいじめられ、スネ夫には流行りのおもちゃを見せびらかされ、ママからはお使いを命令されるなど、たびたび理不尽な扱いを受けてはドラえもんのポケットに頼ることになる。このお決まりパターンが、作中では天文学的な回数繰り返されている。
こうした面ばかりを見ると、のび太は他力本願で頼りないように見えるが、実はものすごい才能に溢れている男なのだ。
のび太は普段は情けないのだが、ここぞと言う時はものすごく強く、頼もしい。勇敢なのび太が見られるのは、アニメ映画の原作にもなった『大長編ドラえもん』シリーズだ。筆者が好きなエピソードは『ドラえもん のび太とアニマル惑星』や『ドラえもん のび太と雲の王国』だが、のび太は『ドラゴンボール』の孫悟空以上に、様々な世界の住民たちを危機から救っているのだ。知っている人も多いと思うが、のび太は射撃の名手であり、『大長編』シリーズではその技術を発揮する場面も少なくない。
のび太はスポーツがぜんぜんできないといわれるが、「ぜんぜん」ではないことがわかる。また、実はテストで100点を取ったこともあるのだ。ドラえもんの道具を借りず、実力で、である。のび太はやればできる男なのだ。
のび太といえば、昼寝の達人でもある。わずか0.93秒で寝ることができるのだ。実はこの能力こそが、ストレスまみれで疲れ果てている現代人にとってはもっともうらやましいのではないか。昨今「ヤクルト1000」がバカ売れしたことからわかるように、現代人は不眠に悩む人が多い。布団に入ってもついスマホばかりいじってしまい、1時間も寝付けずにいる人は少なくないはずだ。そんな人にとっては、のび太の昼寝の才能は喉から手が出るほど欲しいスキルだろう。
そして、のび太は究極の勝ち組である。あれだけしずかちゃん(原作ではしずちゃん)に色々と迷惑をかけながら、最後にはしっかり結ばれているのだ。勉強もできてイケメンという最強のライバル、出木杉くんのような強敵がいても、のび太はひたすら一途にしずかちゃんを愛し続けたのである。作中でも、しずかちゃんのために頑張ろうとする男気溢れるエピソードには事欠かない(それが裏目に出て失敗し、嫌われるのはお約束なのだが)。
映画にもなった『のび太の結婚前夜』に描かれた、しずかちゃんと結婚する前日のエピソードも泣ける。しずかちゃんは、よりによって結婚の前日に、自分が結婚してしまったらパパやママが寂しくなってしまうと感じ、父に結婚をやめたいと言い出してしまう。しかし、父にこう諭されるのだ。
「のび太くんを選んだきみの判断は正しかったと思うよ」
「あの青年は、人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことのできる人だ」
「かれなら、まちがいなくきみをしあわせにしてくれると、ぼくは信じているよ」
最愛の人物の父からも人間性を高く評価されていたのび太。なんていいやつで、幸せ者なんだろうか。
普段はみっともないけれども優しくて。ここぞと言う時に頼もしい。周囲の人にも優しく、温厚に振舞うことができる。のび太は最強のイケメンと言っていいのではないか。そして、現代人の多くが憧れる理想の男性像ではないだろうか?
ちなみに筆者が1番欲しいと思うのは、言うまでもなく、昼寝の才能である。
(文=元城健)