応募者に失礼な態度を取ってしまう面接官は、後で立場が逆転することもあることを、覚えておくほうがいい。北海道に住む40代の女性(事務・管理/正社員/年収950万円)は、12年ほど前に工事機械のレンタル会社の事務職に応募した。ところが、面接を担当した所長は5分もしないうちに信じられない言葉をぶつけてきたという。
「男性ばかりの職場で女性が一人なのであなたには無理だと思う、務まらないよ!履歴書を見て、ましだと思ったけど時間の無駄だった。帰っていいよ」
ほとんど暴言といってもいい酷なセリフだ。しかし意外なことに、その後立場が逆転することになったという。どういうことなのか、編集部では女性に詳しく話を聞いた。
「そんなどうでもいいことグダグダ言っていると、使ってくれるところないよ!」
それは、ハローワークから紹介された会社だった。そもそも女性の前職はホテルの客室清掃のパートだったが、ホテルが外資系企業に買収され、従業員が一斉解雇されてしまった。
「そのとき、ハローワークの勧めで職業訓練を受け、ワードやエクセルの資格を取りました。そうした資格や以前から持っていた簿記の資格も生かせる仕事と思い、応募しました」
と経緯を明かす。しかし冒頭の通り、面接では散々な目に遭った。しかも、
「不採用の場合は本人に電話連絡が来て履歴書は返却されるはずでしたが、いつまで経っても連絡がありません。ハローワークに問い合わせると、不採用の連絡が来ていたそうです。履歴書の返却については、直接問い合わせしてくださいと言われました」
酷いことを言われた上に不採用だった会社に連絡するのは「嫌でした」と振り返る。それでも個人情報のため仕方なく電話すると、所長が電話に出てまたも失礼なことを言われた。
「『郵便料金もかかるので、履歴書は破って捨てました』とのことでした。『個人情報は?』と聞くと『そんなどうでもいいことグダグダ言っていると、使ってくれるところないよ!こっちも忙しんだから、時間取らせないで!』と言われ、電話を切られました」
一方的な発言と態度に、女性は唖然としたという。
「そのあと怒りがこみ上げました。泣きましたし、あまりの態度に本社に連絡をしようかと……実際はしなかったですが、あの時に戻れるなら録音して報告したいです。今の時代ならモラハラ、パワハラで大変だと思います」
こう憤りを再燃させるが、当時はこの一件で気持ちがすっかりくじけてしまった。
「以前から簿記や工業簿記などの資格も持っていて、職業訓練を機に事務系の仕事に就きたいと思っていました。でもこの時はもう自信がなくなり、どうせ私なんか……と、また客室清掃の仕事に戻りました。かなり消極的になり、自分に自信がなくなりました。何度思い出しても腹が立つことでした」
「男性ばかりの会社で女性一人ですが、役職もつき仕事をしています」
しかし、そんな女性にも転機が訪れる。
「その後、偶然自宅近くの求人を見つけてすぐ応募し、採用されました。男性ばかりの会社で女性一人ですが、役職もつき働いています。今の会社はパワハラ、セクハラ、モラハラに厳しく、仕事上で困る事は特にありません」
と希望通りの会社に就職がかなった。むしろ、あのとき不採用で良かったとしか思えないだろう。後日談として、現在をこう明かす。
「いま私はゼネコンの下請で仕事をしています。履歴書を破った会社の営業の方とお話しすることがあり、昔話でその面接の話をしたら、まだその所長さんは近くの営業所にいるそうです。今はその会社に発注する側の人間になったので、いつかご挨拶するときは、『あの面接がきっかけで変われたことは確か』だとお礼を言いたいです」
また、これが反面教師となったのか「発言で人を傷つけることも、救うこともできるし、言ってしまった言葉は取り消すことができません。発言には気を付けています」と静かに語った。
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