企業が市場の反応を見るため、開発中の試作品を展示会などで参考出品と出すことがある。この参考出品がそのまま商品化となるケースも多いが、たとえばバンダイの場合、参考出品は時にイベント時の数合わせ要員なこともある。
何かのイベントで展示されていたフィギュアなり模型なりに「参考出品」とか「販売時期未定」と表記されていると、僕みたいな中年のオタクはその時点で「あ、出ないんだ」と思ってしまいがち。
「参考出品」と表記があるものは、それがたとえどんなに著名なキャラのフィギュアであっても、マジで出ない。もしくは仮に出るとしても5年、10年後に唐突に発売されることとなる。
特にそのフィギュアが主役か、敵、脇役かで命運が大きく分かれる。主人公の味方側はやっぱり安牌なので出ることが多い。しかし敵側はどうしても正義側、主役に比べると売れないので、賑やかしでとりあえず飾っているだけということが多い。特に特撮系は。実際、発売しても売れない例が多い。(文:松本ミゾレ)
参考出品されたのが人気キャラでも発売されないケースも
たとえばS.H.Figuartsというアクションフィギュアブランドでは、2008年に『機動武闘伝Gガンダム』の人気キャラ、東方不敗が参考出品されていた。格闘家キャラなので可動フィギュアとしてリリースされるなら好都合だった。
すぐにでも発売してほしいとするファンも多かったが、これがなかなか発売決定とならず。
いい加減諦めムードになっていたところ、2014年になって唐突にリリースとなったが、この商品は同時期の発売品と比べると可動面で劣っていた、文字通り一世代前のクオリティだった他、関節の保持力も弱かったため、「散々待たせてこれか」と呆れる購入者が続出した。
顔も似てなかった! だから当時、アニメキャラの改造なんか苦手なのに、腕を奮ってパテで改造したものだ。アゴすら割れてないんだもん。どんな資料を参考にしたんだ。東方不敗はケツアゴなの!
同じブランドではシャア・アズナブルも過去に参考出品されているが、こちらもいつしか音沙汰がなくなった。シャアすら未だに出ないのが実情なのである。
かと思えば、先日突然、これまで全然話題にもなっていなかったキラ・ヤマトの可動フィギュアの発売決定がアナウンスされた。映画もあったからね。
このようにバンダイの言う「参考出品」って、本当にイベントの賑やかしなのである。参考出品として試作品が登場したものの、とうとう出なかったアイテムなんて山のようにある。しかしこれがガンプラとなると、ちょっと事情が変わってくる。
ガンプラの場合は参考出品が実際に商品化されることも
バンダイの十八番商品と言えば、それはもうガンプラである。これまで様々な機体がイベントで参考出品含む先行公開がなされたのち、商品化されてきた。
それこそ近年は、一年戦争モノは外伝含めてほぼほぼ出尽くしているし、グリプス戦争期の機体も、もう少しで完全制覇が見えてきた。そして3月、幕張メッセで開催された「HYPER PLAMO Fes.2024」というイベントで、HGボリノーク・サマーン、HGハイザック・カスタムが参考出品された。
ボリノーク・サマーンはこれまであまり立体化の機会に恵まれなかったマシンだが、もうあと少しで『機動戦士Zガンダム』の機体も出揃うので、バンダイも最後の追い込みに掛かっているのかもしれない。
さらに同イベントではHGサイコガンダムMk-IIの試作品も展示されている。こちらもあくまで参考出品ながら、サイコガンダムが発売済みであることを考えると、恐らく発売はされるのではないかと考える。『Z』に関してはサイズが懸念だったサイコガンダムやバウンド・ドックもリリースされているし。
それに、一頃昔は参考出品止まりで商品化は見送られるケースもあるにはあったものの、ガンプラはバンダイの屋台骨であるので、参考出品されたものがそのままリリースとなるケースも増えている。
もっとも、発売されたとて転売屋がネット注文開始のタイミングで、作れもしないのに1人で3つも4つも買い占めるし、店頭でも同じようにイナゴみたく買い漁る。
本当に、発売日当日でも夕方に店舗に行ったら既に売り切れということが続いているので、「どうせ転売屋を含めた争奪戦で負けるんだろうな」と諦めてるファンも多いだろう。僕もその中の1人だ。
こないだも旧BB戦士の後期シリーズで使われた“綺羅鋼”が復刻したということで、この技術が使われているキットを買おうとしたが当日の午後には完全に売り切れていた。最近はSDキット購入も悠長にはできなくなっている。ましてサイコガンダムMk-IIとなると苛烈な争奪戦は必至。
バンダイは未だに転売屋対策にはことごとく後手に回ってるので、今回の参考出品に関しても嬉しさ半分、どうせ手に入らないだろという気持ちも半分だ。