2024年03月30日 09:30 弁護士ドットコム
まもなく迎える入学・入社のシーズンは、地方から上京する若者がトラブルに巻き込まれやすい。逮捕者や店の摘発が相次ぐホスト業界も同様で、被害者支援団体は、若い女性が狙われる「悪質ホスト問題」の発生を懸念している。立憲民主党の塩村あやか参院議員は3月13日に開かれた参議院予算委員会でこの問題を取り上げるなど、国会での議論をリードしてきた。危険シーズンを前に、塩村議員に現状や課題について単独インタビューして聞いた。(ジャーナリスト・富岡悠希)
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──4月を前に被害者支援団体は「悪質ホスト」への警戒感を高めています。
私がご相談を受けている女性も、就職で親元を離れたタイミングで被害に遭いました。実家を離れて親の目が届かなくなるのは、悪質ホストにとっては好都合です。
単にホストクラブに行かなければ大丈夫とは、なりません。SNSで正体を明かさずに近づき、恋心を抱かせてから、「実はホストで売り上げに協力してほしい」と頼んだり、ホストになった男の子が、店で理不尽な目に遭うこともあります。家を出る娘さんや息子さんに、親御さんからもこうした危険性について話してほしい。
──昨年11月に参議院内閣委員会でも質問をするなど、悪質ホスト問題に関心を寄せています。現状認識は?
逮捕者と店の摘発が続き、世間はホスト業界の現実に気が付き始めたと感じています。私自身も含め当初は悪質ホストは、ほんの一部だと思っていたけど、結構な割合でいるとわかりました。
それと同時に、この問題はホスト業界だけで終わらない実態が明るみになってきました。被害はホストへの多額の売掛(ツケ)だけにとどまらない。(国内での立ちんぼなどの)売春、風俗、海外売春の3点セットが付いています。
──私も、マカオへの海外売春に追い込まれた女性を取材しました。先の国会での質問の際に塩村議員が資料として引用しています。
悪質ホスト問題が注目を集めたきっかけは、歌舞伎町で客引きして、売春する女性の多くが売掛を抱えていたことが判明したことでした。しかし、どうもホストは風俗や海外売春へ女性を誘導している。それは、女性がそうした店で働いている限り、彼らにバックマージンが入る仕組みがあるからです。
ホストに促され海外売春に行った複数の女性から、私自身も話を聞いています。彼女たちは一様に海外での売春先で、他の日本人もいたといいます。明らかに組織化された犯罪行為がおこなわれています。
かつて、生活苦のために外国で身を売らざるをえなかった女性を「からゆきさん」と呼びました。今、ある母親は海外売春に出かける娘を「令和のからゆきさん」と悲しげに表現しています。
これは決して、大げさな表現ではありません。私は3月22日の内閣委員会でも、悪質ホスト問題について取り上げました。その際、林芳正官房長官はホストクラブで多額の売掛を背負い、返済のために売春させられる事例について、「人身取引議定書に定める人身取引に該当しうる深刻な犯罪であると認識をしている」と答弁しています。
──私が取材をした女性も、衣装に「日の丸」マークをつけた20代の女性が自分以外に4人いたと証言しています。
日本のアダルトビデオが人気なうえ、自国の女性がしてくれないことを日本女性はしてくれると外国人に受け止められている。人気となり、実入りがいいことから、悪質ホストの被害女性以外にも出稼ぎに出ているのが実態です。
ある方は「日本は国際売春のリーディングカントリー」と表現していました。非常に闇深いです。
──昨秋以降、政府が実施してきた悪質ホスト対策についてはどう見ていますか?
検挙数が増えたことに関しては、すごく評価しています。以前は、男女の痴話げんかとして、警察は一切受け付けてくれなかったのに、今は数日に1回は検挙者が出て、ニュースになります。警察庁の変化は大きいです。
一方、被害そのものは減っていないと捉えています。ホストクラブのビジネスモデルに散見されるのが、ターゲットにした若年女性に多額の債務を負わせ、その肉体を使って返させる仕組みです。業界団体が売掛禁止を打ち出していますが、先に稼ぐにしても、結局は女性は身体を使っています。
風営法を改正して、「客が支払い能力に照らし不相当に高額な債務を負担することを防止するため必要な措置をとらなければならない」ような「遵守項目」を入れる。これだけでも、効果を発揮します。
私はホストクラブ自体を否定していません。支払い能力のある女性が、ストレス発散や楽しみにいくのはあっていい。しかし、今のひどい状況への歯止めは必要です。
──立憲民主党が昨秋、臨時国会で提出した「悪質ホストクラブ対策推進法案」は与党の協力が得られずに廃案になりました。風営法改正の可能性は?
国会での質問の際、私は議員たちの反応をチラチラ見るようにしています。岸田首相も出席した先日の予算委員会では、自民党議員が相当強くうなづく場面もあった。自民党も問題に気づけば、これまでの態度を変えるのでは。
──先の予算委員会では、自民党の稲田朋美衆院議員がホストクラブ経営者の男性らと映った写真についても言及しています。
昨年12月、写真がネット上で出回ったあと、娘を被害者に持つ、あるお母さんはとても怒っていました。「悪質ホスト問題で世論が燃えているときに、稲田さんはこんなものを撮って」と。そして、写真を添えて、首相官邸に抗議メールを出しています。関係があるかは不明ですが、ネット上の元の投稿は消えました。
この男性は、稲田さんのパーティーに出席して、稲田さんと一緒に写真を撮っています。となると、男性のようなホストクラブ経営者たちが、他の自民党議員のところに行って、献金なり、パー券購入をしているかもしれないという疑惑もありえます。
パー券は裏金だけでなく、献金で政策が曲がるかもしれないという問題を抱えています。だからこそ、野党は追及しているのです。ホスト業界への配慮がないならば、自民党は反論してほしい。そして、風営法を含めた対策をすすめてもらいたいです。