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中村健治×柴山智隆×塚原重義 新作アニメ映画監督トーク、オリジナル作品の醍醐味とは

2024年03月24日 19:00  コミックナタリー

コミックナタリー

左から塚原重義、中村健治、柴山智隆。
「劇場版モノノ怪 唐傘」の中村健治監督、「好きでも嫌いなあまのじゃく」の柴山智隆監督、「クラメルカガリ」「クラユカバ」の塚原重義監督による「最新アニメーション映画 監督SP鼎談」が、本日3月24日に「AnimeJapan 2024」内で開催された。

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「クラメルカガリ」「クラユカバ」は2作品同時に4月12日、「劇場版モノノ怪 唐傘」は7月26日に劇場公開。「好きでも嫌いなあまのじゃく」は5月24日よりNetflixで世界独占配信され、国内では同日より劇場上映も行われる。いずれもアニメーションの企画プロデュース会社・ツインエンジンから年内に送り出されるオリジナル長編アニメということで、3人の監督は各作品の紹介だけでなく、普段の制作スタイルについてもクロストークを繰り広げた。

インディーズアニメで注目を集めてきた塚原の初の長編作品「クラユカバ」「クラメルカガリ」は、“クラガリ”という街の地下領域をはじめ、その独特な世界観が特徴。柴山もその世界観を称賛しつつ、「イメージがユニークであるほどスタッフとの共有が難しいと感じているんですが、この世界観をどうやって共有したんですか?」と塚原に尋ねる。リアルなスタジオはなく、日本全国のスタッフとdiscordでコミュニケーションを取りながら作っているという塚原。「とにかく雑談をいっぱいするんです。作業配信が大好きなスタッフがいて、自分の作業画面をずっと配信している。それを中心に周りでみんながワイワイしているような感じです」と独自の制作環境を明かした。

3月16日に作品情報が解禁されたばかりの「好きでも嫌いなあまのじゃく」。柴山は「最近の子たちは、人の顔色をうかがって、先回りして自分の気持ちを隠しがちの子が多いんじゃないか」という思いがあったと述べ、内容は「青春ファンタジーロードムービー」と表現した。中村はいち早く映画を全編観たそうで、「シンプルに、つむぎちゃんがかわいかった(笑)」と鬼の少女・つむぎを絶賛。断れないタイプの少年・柊と正反対のつむぎの関係は、見ていて面白いポイントだと柴山も語った。

TVアニメ放送から時を経て、完全新作として届けられる「劇場版モノノ怪 唐傘」。特報映像を観た塚原は「圧倒的。言葉で表現しても陳腐にしかならない」とリスペクトを示し、続けて「尖った作品、尖った絵を採用すると演出的な縛りが出てくると思うんですが」と同業者ならではの疑問を投げかける。中村はこれにうなずき、「『モノノ怪』は“これをやってください”というより“これはやるな”っていうことがすごく多い。普通のアニメーションなら使っていい技術や演出技法はことごとく禁止していて、自分も含めてみんなを追い詰めてる(笑)。それ(禁止事項)を1つ解除するときは、みんなで会議です」と制作の苦労を明かした。

また「絵コンテを描くうえで意識していることは?」というテーマでも、監督同士ならではのトークが展開される。「僕は自分から出てきてるものだけで作ってもあまり面白くなくて、才能あるスタッフとセッションして作るのが好き。そのあたりの遊びを残すようにしています」という柴山に対し、「プロットから直にビデオコンテを作って、自分で全部セリフも入れる」という塚原。実際に使っているソフトウェアにも話題は及び、柴山は「TVPaint Animation」、塚原は「Storyboard Pro」、中村は「CLIP STUDIO PAINT」と「Blender」を組み合わせて使っているという。

続いて「オリジナル作品を作るうえで感じる面白さ」というテーマには、「難しい」と頭を悩ませる3人。柴山は「答えがないので、スタッフとのセッションやライブ感の中で正解を探っていく。その制作過程そのものが面白い」と述べ、塚原も「磨きをかけていく工程がすごく楽しい」とこれに同意する。中村も「監督って全然偉い職業じゃなくて、周りからいろいろオーダーされて直していくんですよね。結局それがエンドユーザーの感覚に近いと思うので、発見がある」と語り、多くのスタッフとともに正解を探っていくという、オリジナルアニメならではの醍醐味を伝えた。