2024年03月23日 09:40 弁護士ドットコム
セルフ式のうどん店で幼児が火傷を負った!責任をとってもらいたい──。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
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相談者は1歳10カ月の息子と2人で入店し、釜揚げうどんと天ぷらを注文。うどんのトレイをカウンターに残して、もう1つのトレイを席に持っていきました。
息子はそばにいると思って、一瞬目を離したところで背後から大きな音が。振り返ると、カウンターから落ちた熱々のうどんが息子にかかっていました。すぐに治療を受けたものの、医師からは火傷痕が残る可能性が高いと告げられたそうです。
「目を離した自分がいけなかった」と後悔するものの、店側の安全対策が十分だったか疑問が残るといいます。店側に責任はあるのでしょうか。大和幸四郎弁護士に聞きました。
──飲食店は客の安全についてどのような責任・義務を負っていますか。
一般的に、飲食店は客が火傷やケガなどを負わないようにする安全配慮義務を負っているとされています。
客自身が飲食物の受け取りや配膳などをおこなうセルフ式でも、家族連れで食事できる店舗が増えていますし、値段の高い食事を提供する店舗もあります。
セルフ式の飲食店でも、客自身による火傷やケガならまったく責任がないと言い切れるのかどうか。私は、具体的な事情によって、店の責任を認めるべき場合があると思います。
──どんな場合に店の責任が認められるのでしょうか。
子ども連れで利用する場合は、店側の安全配慮義務を多少厳しく判断しても良いのではないでしょうか。
たとえば、レジ付近に「お子様連れの場合は、目を離さないようにしてください」といった注意書きを設置するなどの措置も、義務に基づく対応として考えられるでしょう。セルフ式では会計後に食事を提供することになるので、従業員同士で「お子様連れのお客様がいらっしゃいました」などとあらかじめ声掛けをすることなども良さそうです。
──今回のケースで店の責任はどうなりますか。
子ども連れでセルフ式の飲食店を利用する保護者の監督責任は、セルフ式でない場合に比べ、保護者自身が受け取り等をする分、大きくなるケースが多そうです。
店内で発生した事故の責任を店側が一定の限度で負う場合でも、保護者の監督義務違反に基づく過失割合が大きく、限定的なものになると思います。
今回のケースでも、判断能力が不十分な1歳10カ月の息子から保護者が目を離したこと、熱いうどんのトレイをカウンターに残してしまったことは問題でしょう。保護者の監督責任が大きく、店への責任追及は難しいように思います。
ただ、本件ではレジ付近に「お子様連れの場合は、目を離さないようにしてください」といった注意書きを設置するなど簡単な措置をしておけば事故は防げたかも知れません。
せっかく食事をするのですから店の態様によらず、保護者や店側が注意義務をつくして、楽しく食事をしてもらいたいと思います。
【取材協力弁護士】
大和 幸四郎(やまと・こうしろう)弁護士
佐賀県弁護士会。2010年4月~2012年3月、佐賀県弁護士会・元消費者問題対策委員会委員長。元佐賀大学客員教授。法律研究者、人権活動家。借金問題、相続・刑事・男女問題など実績多数。
事務所名:武雄法律事務所
事務所URL:http://www.takeohouritu.jp/