大衆娯楽として昔から庶民に親しまれてきたパチンコ。
そのパチンコを楽しむことができるパチンコホールは、全国におよそ7,000店舗ほど存在する。
これだけ多く存在し、気軽に出向ける娯楽施設かつ、ホールも慈善事業ではなく営業のためには利益を得る必要があることから、遊技客が1日で数万円負けてしまうという例も決して珍しくない。
庶民の娯楽とは言いつつも、いつしかパチンコホールにはハイリスクな遊技機が台頭するようになっており、ユーザーも出玉推移がマイルドなものよりも、荒い勝負ができる機種を好む傾向にある。
当然そういった機種を打てば基本的にはお客が負けてしまうことになるが、中には大金を失ったことを逆恨みして、思わぬ凶行に及ぶユーザーというのも少数ながら出てしまう。
それこそ先日も、負けた腹いせなのか、設置されている遊技台に放尿をしてしまうお客が出現。しかもこの客、国家公務員だというから驚きだ。
前代未聞!遊技台放尿事件発生!
パチンコ・パチスロで手痛く負けてしまったお客が、仕返しに遊技台に対して悪戯をするという事例は昔から色々と発生してきた。
たとえばパチンコ台の上皿にわざとお茶、ジュースを流し込んだり。パチスロ台の告知ランプ付近に火のついたタバコを押し付けて焦がしてしまったりという、迷惑客がその代表例。
が、3月9日に発生した事件は、それらの悪戯を完全に凌駕するとんでもない事例となった。
現場は仙台市太白区のパチンコホール。
営業中のホールで事件は突然発生した。遊技台から不具合を知らせる警報が鳴り、店員が防犯カメラを確認すると、直前までその台を遊技していた男が尿をかけている様子が確認できたのである。
この放尿男、なんと翌10日にも来店。当然その場で逮捕されている。
メディアの報道によると逮捕された男は仙台市青葉区在住の国家公務員で、年齢は48歳。恐らく収入も低くはないであろう公務員が遊技台に放尿まで決意したきっかけとは、一体どのようなものだったのだろうか。
そして何故、犯行に及んだ翌日にも普通に来店できたのだろうか。この一件が報道されるとネット上では、
《パチンコに負けて腹いせするくらいならギャンブルなんかするなよ》
《国家公務員で、これしちゃマズいでしょ》
《金かけて人生かけて小便かけて、かけ事ここに極まれり》
《国家公務員がパチンコ台に放尿して逮捕……もったいねーな、安定した収入を捨てるなんて》
ともはや大喜利状態。
実はこうした、いわゆるパチンコ遊技客の暴走によって引き起こされる事件というのは意外とバリエーションがある。
営業中にハンマー殴打事件も発生、ホールは危険がいっぱい?
パチンコ・パチスロで負けが込んでしまうと、遊技者の中には怒りのあまりに暴力的な行動に出てしまうという者もいる。
たとえば数万円突っ込んで出玉が得られない場合、とっさに台を殴る行為。通称“台パン”に及ぶ短絡的なユーザーは結構多い。台なんか殴ったところで、入れたお金は返ってこないが、それでも殴らずにはいられないのだろう。
殴ると言えば、2016年7月6日には、埼玉県八潮市にあるパチンコホールで、当時52歳の無職の男が、同店に設置されていたパチンコ台を持参したハンマーで殴打し破壊するという事件が発生している。
男は犯行前にこのホールに来店していたことから、負けた腹いせで台の破壊に及んだものと思われる。
この事件が生んだ余波は大きく、数年前まで某パチンコホールの幹部社員だった人物はこう振り返っている。
「報道では、被害に遭ったパチンコ台はおよそ30台、当時の主力機種だったこともあり凄まじい損害が生じる犯行になったと、私の職場でも話題になっていました。さいわい私がいた店舗ではこういった事件は起きませんでしたが、もし自店でこういった事件が起きた時、お客様の身の安全をどうやって担保すべきか、随分悩みました」
なお本件ではこれ以外に被害はなく、居合わせた店員や遊技客にけが人は出ていない。
この犯行は、たまたま居合わせた人物によって動画撮影もされていたため、SNSを中心に動画が拡散され話題となっていた。
客同士の殺傷未遂事件が起きたことも
2018年7月5日には愛知県名古屋市北区のパチンコホールで、客同士のトラブルによる殺人未遂事件が発生している。
このホールには低貸し。いわゆる低レートのコーナーがあり、真贋は不明ながら事件直後には容疑者と被害者はこの低貸しコーナーの常連だったと、ネット掲示板に書き込みが見られた。
あるホールスタッフは、低貸しコーナー独特の“雰囲気”に関してこう説明する。
「4円パチンコ、20円パチスロという通常レートでもお客様同士の問題は生じますが、低貸しコーナーはトラブルの発生頻度は高いと感じます。
理由の一つに、不景気でなかなかお小遣いも少ない中で遊技したいお客様が多く、そういった方々が低貸しに集中したことで、結果的にトラブルもまた増えているということが考えられます。
今は低貸しの客付きだけが良いホールも増えていますので、常連様同士の小競り合いに悩まされるホールさんも少なくないと感じます」
レートの如何を問わず、本来は店の設置した遊技機相手に一喜一憂するのがパチンコ・パチスロ。
しかし場合によっては常連同士でいがみ合い、トラブルに発展してしまう場合もある。
本件では被害者が刃物でめった刺しにされており、男は殺人未遂の現行犯として逮捕された。
容疑者は職業不詳の当時44歳と報じられている。
なお、この事件では他の遊技客にけがはなかったものの、巻き込まれた店員が負傷している。
パチンコホールは基本的に平穏、しかし事件が起きることも……
と、ここまで営業中に発生した、パチンコホールのさまざまな事件を振り返ってみた。
返す返す、国家公務員による放尿行為はインパクトが強いが、やはり遊技場とは言えど、その実態は明らかにギャンブル。
庶民の娯楽という建前での三点交換方式で取り繕ってみても、ユーザーの中のごく一部が、1日に数万円も負けてしまったことでタガが外れた暴走に至ることもないわけではない。
もちろん、ホールに訪れる遊技客の99%は負けても悔しいと思いこそすれ、ホールや他の遊技客に実害をあたえるようなことはしない。
ここで紹介した事件は本当にプレミア級のレアケースであるとご理解いただきたい。それでも事件が起きる時は起きてしまうわけだが……。
取材・文/松本ミゾレ