千葉県南部と東方沖で地震が頻発している。今年1月に震災に見舞われた能登半島では数年にわたって群発地震が発生していたことから、いつか関東でも大きな地震が起こるのではと懸念する動きがある。この地震の頻発で「引越を考えている」というのが、湾岸タワマン20階に暮らす40代の男性だ。
「タワマンに住んで10年あまり、地震への意識が日に日に高まって、いよいよ限界を感じているのです」
そんな男性の心境を尋ねてみた。(文:広中務)
揺れてなくても「揺れてる?」と思ってしまう
地震は怖いものだ。しかし、関東大震災クラスの地震があっても、最近のタワマンが倒壊したりポッキリと折れてしまうようなことは想像し難い。その点は男性も承知している。
「免震構造にはなっていると聞いていますし、まさか21世紀に建設されたタワマンが地震で倒壊するとは思えません。問題は揺れです」
地震の際、高い建物は低い建物よりも長い時間にわたって揺れる。高層階になるほど、揺れは大きくかつ長時間にわたって続く。
「なんとなく、船に乗っているように揺れる感じです。2011年の東日本大震災の時は、会社の10階フロアにいました。あれほどの規模の地震は来ていないので、激しく揺れているわけではないのですが、かえって気持ちが悪いんです」
長い揺れは、確かに気持ちが悪い。筆者の自宅はマンション8階だが、その程度の高さでも後揺れは長く続くように感じる。最初の激しい揺れがおさまった後、ゆーら、ゆーらと揺れている感覚は独特で、いつも本棚の本が落ちてくるのではないかと気になる。
男性は、そうした感覚が次第に耐えられなくなってきたという。
「以前はそうでもなかったのですが、ここ数年、地震のたびに揺れで“酔う”ような感覚を感じるようになりました。おまけに、揺れていないのに、ちょっとした震動を“地震ではないか”と錯覚することが増えたんです」
これは男性だけに起こっている現象ではない。大きな地震後に余震が続いたり、群発地震の多発する地域では「揺れていないのに揺れているように感じる」として病院を受診する人が増える。いわゆる「地震酔い」という現象だ。原因は、地震に起因する不安にあるのではないかと指摘されている。
「地震に対して神経質になっているなとは自覚しています。ちょっとした震動とかでも“あれ、地震かな”と考えることが多いんです」
ちなみに男性の妻も、地震に対して同じような感覚を持っているという。
「夫婦揃って、地震に過敏すぎるとは思うんですけど、安心して暮らせないなら引っ越したほうがいいと思っているんです。だいたい、買った時は20階は自慢でしたけど、夕食の時に妻に“パパ、マヨネーズ買って来て”とかいわれたときに、ホントに面倒くさいですから」
ちなみに、さすが湾岸のタワマンというべきか、今なら購入価格よりも高額で転売ができるらしい。その点も男性の引越熱に拍車をかけているそうだ。くそう、揺れるのは羨ましくないけど、そこは羨ましいな。
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