山田尚子監督によるオリジナル長編アニメーション映画「きみの色」の製作報告会が、本日3月18日に東京・esports銀座で行われた。
【大きな画像をもっと見る】8月30日に公開される「きみの色」は、人の心が「色」で見える高校生の少女・日暮トツ子が、街の片隅にある古書店で出会った美しい色を放つ美少女・作永きみ、音楽好きの少年・影平ルイとバンドを組んだことから始まる物語。脚本は「けいおん!」シリーズ以降、山田監督とタッグを組んできた吉田玲子、音楽は牛尾憲輔、制作・プロデュースはサイエンスSARUが務め、企画・プロデュースを「すずめの戸締まり」など新海誠監督作品を手がけたSTORY inc.が担当する。本日の製作報告会には山田監督と、企画から携わっている川村元気プロデューサー、そして主人公3人の声を担当する鈴川紗由、高石あかり、木戸大聖が登壇した。
まずは山田監督と川村プロデューサーが姿を現し、「きみの色」の製作に込めた思いを明かす。もともと山田監督のファンだったという川村プロデューサーは「『リズと青い鳥』が公開されたときには、新海誠監督から連絡がきて。『すごい映画ですよ』と聞いて観に行って、ずば抜けた演出力に驚かされました。新海監督も嫉妬を感じる才能だと言ってました」と述べると、山田監督は「とんでもない話、光栄です。ありがとうございます」と恐縮する。また海外からも高い関心が寄せられていることを明かした川村プロデューサーは「すでに210の国と地域の公開が予定されている状況。まだ完成品を観れていない状態でこれだけのグローバルセールスが決まるのはジブリ作品や新海誠作品並み」と絶賛した。
「観てくださった方の映画体験を大事にしたいなと思って取り組みました」と語る山田監督は、「人の心が色で見える」というアイデアについて、「すごく感覚的なことになってしまうんですけど、映像として作って観ていただくために、言語化することをしないようにと考えていて。主人公のトツ子の世界の受け取り方を、色で表現してみたいなと思いました」と説明。また今回はオリジナル作品ということもあり、作品の世界観や大切にしている部分をどうスタッフへ共有すべきか考えたと言い「どんな言葉を使ってどういう目線でお話をしていこうか、そういうところに気を遣いました」と振り返った。
そんな山田監督の作品に対し、川村プロデューサーは「映画館で観てほしいというのはまさにそう。セリフとセリフの間にいろんな感情が写っていて、映画館で集中して観ないと見落としてしまう。これが山田尚子なんだなと僕も納得しました」とコメント。さらに「10代の子たちの、言語化できない感情を描くのが日本一上手い監督だと思っているし、ファンの方は山田監督の音楽の演出がとても好きだと思うので、その2つが両方入ってる贅沢なフィルム」と、作品の出来に対する自信ものぞかせた。
そしてトツ子役の鈴川、きみ役の高石、ルイ役の木戸がキャラクターをイメージしたカラーの衣装でステージに登場。山田監督はオーディションで選ばれた3人の決め手を語る。鈴川に対しては「独り言がかわいかったんです(笑)。トツ子が1人で猫に話しかけるシーンがあって、それを自分の中だけですごく楽しんでるのが伝わってきた」と、“一耳惚れ”だったことを明かす。高石に対しては「お声を聞いたら耳にこびりつくような不思議な音をされてるなと思って、そこに魅力を感じて決めました」、木戸に対しては「普段の話すときのトーンや色味がとても影平ルイくんだった。私が想像するルイくんにピッタリ」と、それぞれほぼ即決で決めたと述べた。
山田監督の印象について、鈴川は「クールな方なのかなと思っていたんですけど、関西弁がすごくかわいくて。私も関西出身なので親近感があって、初めてのアフレコで緊張してたんですけどリラックスして挑むことができました」とコメント。高石は「心で会話してくださる方。作品について話すときもに、気持ちをそのまま伝えてくださる」と語りながらも、「でも人見知りな方で……(笑)」と続けると、木戸も「3人一緒にお会いしたときも監督が一番緊張されていて(笑)」と振り返る。「でも逆にリラックスできたというか。僕らと同じ目線に立ってくださる優しい監督」と木戸が述べると、山田監督は「ありがとうございます」と恥ずかしそうにしていた。
また本日公開されたスペシャルPVでは、劇中歌「水金地火木土天アーメン」の音源も解禁に。山田監督はその劇中歌について「トツ子たちのバンドの曲です。音楽を牛尾さんが作ってくださって、歌詞はトツ子たちが書いたら……ということで」と説明する。作中で3人が演奏したことが納得できる楽曲にしたいと考えていたそうで、「難しい展開があるとか、ものすごい練習が必要ということではなく、がんばって練習をすれば弾ける曲。この時期の彼女たちが作ったのが納得できることを大事にしてます」と明かすと、鈴川も「トツ子らしいチャーミングな言葉選びで、つい鼻歌で歌っちゃったりする、中毒性のある楽曲だなと思います」と語った。
さらにトツ子たちが通う学校のシスターで卒業生でもあるシスター日吉子を演じた新垣結衣からのコメントが読み上げられる場面も。新垣は演じたシスター日吉子について「トツ子たちに対して、他の大人たちよりもひとつ心の距離が近いというか、静かに、でも熱く、いや実は“かなり”熱く、トツ子たちを見守っている人です」と説明しながら「とてもやり甲斐ある作業でした」とアフレコを振り返る。そんな新垣へオファーしたという山田監督は「新垣さんのことはテレビや映画でしか知らないですけども、勝手な思い込みで、きっと芯があってこだわりも強くて、ぶっきらぼうなぐらい真面目で、でもチャーミングな方なんじゃないかと思っていて。まさかお受けいただけるとは」と、新垣がシスター日吉子にぴったりだと考えていたことを明かした。
最後は山田監督が「きっと観てくださった方の今までだったり、これからあるかもしれないことだったりに触れることができる映画なんじゃないかなと思っています。何より劇場で観ていただく、映画体験をしていただくというのをすごく大切に思って作った作品なので、ぜひ劇場に足を運んでいただければと思っております」と作品をアピールし、本日のイベントを締め括った。
■ 映画「きみの色」
2024年8月30日(金)全国東宝系公開
□ スタッフ
監督:山田尚子
脚本:吉田玲子
音楽・音楽監督:牛尾憲輔
キャラクターデザイン・作画監督:小島崇史
キャラクターデザイン原案:ダイスケリチャード
企画・プロデュース:STORY inc.
制作・プロデュース:サイエンスSARU
製作:「きみの色」製作委員会
□ キャスト
日暮トツ子:鈴川紗由
作永きみ:高石あかり
影平ルイ:木戸大聖
シスター日吉子:新垣結衣
(c)2024「きみの色」製作委員会