トップへ

大河としては異例!? 2週連続キスシーンを展開した『光る君へ』

2024年03月18日 12:20  キャリコネニュース

キャリコネニュース

写真

平安時代を舞台に、やがて紫式部として後世に知られることとなる女性・まひろ(演:吉高由里子)と藤原道長(演:柄本祐)の2人を主人公として描く今年の大河ドラマ『光る君へ』。

元々第1話時点でこの両名がお互いに惹かれ合う流れとなる導線はくっきり見えていたが、ここ最近はお互い年ごろに成長したこともあり、想いを詠んでは送り合うという何とも雅で慎ましいやり取りも描かれるようになった。

加えて3月10日放送の第10回では、ついに気持ちが抑えきれなくなった道長とまひろが夜間に逢引し、熱烈なキスからの、割としっかりめに濡れ場が描かれるまで至ることとなった。

さらに17日放送の第11回でも、再び両者は口づけを交わす。こんなに頻繁に逢瀬を重ねてチュッチュしまくる大河ドラマって過去にあったっけなぁ。

しかし、本作の凄いところは、この度重なるラブシーンにいやらしさは感じられず、演出も綺麗なので視聴する分には素直に応援をしたくなるところだ。いやらしさがないラブシーンの根底には、はかなさ。無常感がなければならないと思っている。『光る君へ』の場合は道長とまひろには圧倒的な身分差があり、たとえ一時結ばれてもそれはそれ。

まひろは立場上、道長の妾になるのが精々で北の方(正室)になることは万に一つもあり得ない。だからこそ、わざとまひろも妾という立場では嫌だと意思表示をする。

本当は、あれだけの才女なんだからわざわざ反論しても仕方がないことぐらい分かっているだろうに……という切なさが伴う逢瀬だから、ラブシーンにもいやらしさ、下品さが生じない。(文:松本ミゾレ)

そもそも本作はOPの映像も官能的!

本作に関しては、最初に第1話を観たときに、オープニングクレジットの背景で流れる映像にちょっとエロスを感じたのをおぼえている。花が開くシーンから始まるやつだ。まだまひろと道長の関係性もよく分かっていない段階で観ていたので「なんかちょっとエッチだな」と思ったものだ。官能的と言えば官能的である。

このような作りの映像が毎回のアバンタイトルの後に流れる大河ドラマというのは、僕が見た限りでは存在しなかったと思う。勇壮なものや幻想的なものが大半だったので。大河のオープニングってのはその作品の色をがっつり主張するものだから、それで言えば本作のあの映像はたしかに『光る君へ』の作風をしっかり表現できていると感じる。

その上で、ここ2週に渡って特に主張されている身分の違う者同士の純愛を思うと、最初こそ「エッチだな」と思ったあの映像も、今となれば「このぐらいでちょうどいい濃度かも」と思わされる。

まひろは後年では紫式部と呼ばれるようになる、『源氏物語』の著者。この『源氏物語』にも、今回演出された身分違いの男女の恋愛描写があったので、その辺の知識がある人たちも納得したに違いない。

なかなか当人の人間性はおろか、そもそも正式な名前すら分かっていないまひろの人生を描く大河だからこそ『源氏物語』からフィードバックしてドラマに生かす場面というのは今後もまだあるはず。最初に読んでからだいぶ時間が経過しているので、ちょっと折を見て読み返してみたい。

これまでの大河で観られたラブシーンは史実上の出来事っぽく見えたが、本作は…

で、もう一つ本作のラブシーンについて書いておきたいことがある。それはやはり、大河ドラマとしては熱を帯び過ぎたようにも思える描き方だった、ということだ。

これまでの大河ドラマでも、有体に言えば「子作り」のための行為に繋がる導入部分と、事後などは描かれてきた。もっとも記憶に新しいのが一昨年放映の『鎌倉殿の13人』における、源義経(演:菅田将暉)が見初めた里(演:三浦透子)とのワンシーン。どこか海辺のあばら屋みたいなところで描かれた2人の事後は、かなり短くセリフもなかったが、なんともリアルな情景を感じさせるものだった。

が、これも『光る君へ』ほど生々しい情動と性を感じさせるものではなく、あくまでもこうして結ばれた双方が子を授かる程度には関係を深めますよ、という経緯説明のようなシーンだった。

大河ドラマでのラブシーンって、基本的にはこういった「戦の合間のおまけ」みたいな要素。時にはラブシーンそのものがほとんど存在しない作品もあったし、それが普通となっている。

一方で今回の大河は平安時代が舞台なので、大乱もなく、合戦描写といったものにはあまり期待は持てない。その分、まひろの生涯をなるべく丁寧に、想像の部分も大きいものの大事に演出したいということなんだろう。ラブシーン1つとっても、まひろの人物造形に大きな深みを持たせている。

なにより、ここまで僕が書いたようなこざかしい考察なんかしなくても、大河ドラマとしても誠実に作られているし、恋愛ドラマとしても一流の作品となっている。僕はやっぱり、戦国モノが大好きなので「うう、血が足りない」と思う部分もあるっちゃあるんだけど、そこはそれ。政争劇はかなり面白いし、登場人物も魅力的な者が多いし、何よりまひろの行く末が気になってしまう。

まだまだ放送は序盤も序盤。まひろと道長の関係性も徐々にのっぴきならないものになり、今後は道長も出世の足固めのために北の方を迎えることになる。当然その相手はまひろではない。

そしてまひろとも関係性が良好な倫子(演:黒木華)が道長を狙っているっぽいことも発覚したし、「この恋一体どうなっちゃうの~~?」状態である。来週以降も見逃せない!