2024年03月18日 10:10 弁護士ドットコム
体験型デジタルアート施設「チームラボ」で、スカート姿の女性参加者の下着が床の鏡に映り込み、それを撮影した画像がSNSやインターネット上に出回っている。
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運営会社のチームラボによると、過去には客からの被害申し出を受けて、撮影したとみられる客を警察に引き渡したことがあったという。
「鏡に映り込んだスカート姿の女性の下着」を撮影した場合であっても、罪に問われるのだろうか。
都内など国内外に体験型デジタルアート施設を展開するチームラボは、客自身が身体ごと巨大な作品に没入する体験を狙って、床に鏡を配したエリアを用意している。
ただ、スカートや裾の広いズボンなどの格好の場合、下着が映り込む可能性があるとして、チームラボは公式サイトや入館の際のアナウンスによって事前に注意を呼びかけるとともに、希望者にハーフパンツを無料で貸し出している。
しかし、チームラボの施設で撮影されたとみられる女性の下着が鏡に映った画像がSNS上でいくつも確認できる。
また、3月には「チームラボが合法でjkパンチラ見れる場所と分かってからおじさんが集結してるらしい、、」というXの投稿も拡散した。
チームラボの広報は「過去に数件、被害者と思われる方のお申し出に則り警察へ対応を依頼し、案件の引渡しをしております」などと弁護士ドットコムニュースの取材に回答した。
はたして、鏡に映った下着姿を無断で撮影すると、どんな罪に問われる可能性が考えられるのだろうか。わいせつ事件にくわしい奥村徹弁護士に聞いた。
——チームラボの展示施設において、スカート姿の女性の下着を無断で撮影することは、どのような罪に問われると考えられるでしょうか
東京都の迷惑行為防止条例は「公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物」における「人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置」して「正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為」を処罰しています(第5条1項2号)。
今回の展示施設は「不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所」に該当するので、条例の盗撮罪が成立するでしょう。
スカート姿の女性の下着を撮影する行為だけでなく、太もも周辺を撮影した場合も含みますし、撮影目的でカメラを差し向けることも同じ罪になります。罰則は1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
さらに、性的姿態撮影等処罰法が施行された2023年7月13日以降の行為については、性的姿態等撮影罪(同法2条)が適用されます。
「人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分」を「正当な理由がないのに、ひそかに、人が通常衣服を着けている場所において不特定又は多数の者の目に触れることを認識しながら自ら露出し又はとっているものを除いたものを撮影する行為」が処罰されます。
法定刑は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金です。未遂でも処罰されます。
また、そうやって撮影された「性的影像」に該当する画像については、提供罪・公然陳列罪、提供・公然陳列目的保管罪など、流通させる行為も処罰されます。
性的影像記録をSNSで公表する行為は公然陳列罪(同法3条2項)となります。法定刑は5年以下の拘禁刑もしくは5百万円以下の罰金で、または併科となります。
なお、対象が児童の場合、普通にスカートをはいて立っている姿は、社会通念上衣服の全部を着けていることになって「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」(児童ポルノ法2条3項3号)には該当しないので、児童ポルノ製造罪(7条5項)には該当しません。
——それでは、同じくチームラボの展示施設において、鏡に映り込んだスカート姿の女性の下着を無断で撮影する場合はどうでしょうか
まず、鏡越しに見る行為から考えてみます。これは迷惑行為防止条例の「卑わいな言動」(5条1項3号)を疑われることがあるでしょう。報道ベースでは手鏡をスカート内に差し込んで覗く行為の検挙事例が見受けられます。
ただし、法文では「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為」という要件があることや、判例上(最決平成20年11月10日)、「卑わいな言動」とは、社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作をいうと解され、女性客の後ろを執ように付けねらい、デジタルカメラ機能付きの携帯電話でズボンを着用した同女の臀部を近い距離から多数回撮影した行為が「卑わいな言動」とされていることからは、鏡越しの場合には、近距離から執拗に見る程度の行為に限られるでしょう。
続いて、鏡越しに撮影する行為については、条例の盗撮罪にしても、性的姿態撮影罪にしても、撮影方法に限定はないので、鏡に映り込んだものを撮影した場合も、同じ罪に問われる可能性があります。
鏡越しに撮影した画像を拡散する行為についても公然陳列罪(同法3条2項)が疑われます。
ただし、鏡に映り込んだものを撮影する場合は、カメラをスカート内に差し込む場合と比べると、距離的に少し離れることから、下着を狙って撮影したのか、それともたまたま下着が映り込んだのかが判然としないことがありうると思います。
【取材協力弁護士】
奥村 徹(おくむら・とおる)弁護士
大阪弁護士会。大阪弁護士会刑事弁護委員。日本刑法学会、法とコンピューター学会、情報ネットワーク法学会、安心ネットづくり促進協議会特別会員。
事務所名:奥村&田中法律事務所
事務所URL:http://okumuraosaka.hatenadiary.jp/