2024年03月16日 09:20 弁護士ドットコム
5人組の女性アイドルグループ「#ババババンビ」のメンバーに「GPS発信機」とみられるものが送られ、所属事務所は「許し難い犯罪行為」と厳しく非難した。
【関連記事:「16歳の私が、性欲の対象にされるなんて」 高校時代の性被害、断れなかった理由】
標的になったのは、メンバーでグラビアアイドルの岸みゆさんだという。所属事務所は3月10日、岸さん宛のプレゼント包装に「GPS発信機のようなものが仕込まれたという事件が発生」したと公式サイトで公表。すでに警察が仕込んだ人物を特定したという。
「今後も犯罪行為に該当するものは行政機関への報告を行うことをお伝えいたします」(事務所)
この2月にも、VTuberグループ「あおぎり高校」の所属VTuber宛のプレゼントにGPS発信器が隠されていたと発表されていた。こちらについては、運営会社は顧問弁護士と協議のうえで、刑事告訴を検討したという。
アイドルにGPS発信機を送りつけるだけでも、罪に問われる可能性があるのだろうか。刑事事件にくわしい澤井康生弁護士に聞いた。
——GPS発信機を仕込ませたものを他人に送りつけたり、それを持ち帰らせて自宅住所などの位置情報を不正に入手したりすると、どんな罪に問われますか
特定の相手への恋愛感情やその他の好意の感情を充足する目的で、GPSを用いて位置情報を無断で取得すること(位置情報無承諾取得)は、法改正によって2021年8月からストーカー規制法で禁止されました(3条)。
具体的には、相手のGPS機器の位置情報を無断で取得する行為(2条3項1号)や相手の持ち物に無断でGPS発信機を取り付ける行為、GPS発信機を取り付けた物を相手に差し入れる行為(2条3項2号)が「位置情報無承諾取得」に該当します。
これに違反した場合、警察署長は行為者に警告や禁止命令を出すことができます。
行為者が禁止命令に違反してストーカー行為をおこなった場合、2年以下の懲役または200万円以下の罰金に処せられます。
このような「位置情報無承諾取得」の行為を反復すれば、「ストーカー行為」に該当し(2条4項)、ストーカー行為罪として1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
これを今回のケースにあてはめてみると、アイドルへのプレゼントにGPS発信機を仕込んで渡すことは、「位置情報無承諾取得」の行為に該当します。
これが1回おこなわれただけであっても、この段階で警告や禁止命令を出すことができます。
さらに、反復していれば、ストーカー行為罪が成立するので、刑事告訴して立件することも可能です。
行為者が禁止命令に違反してまでストーカー行為をおこなった場合も同様です。
アイドルの位置情報を取得するまでに至らなくても、相手の持ち物にGPS発信機を取り付けたり、GPS発信機を取り付けたもの(プレゼント)を交付したりするだけでも違法行為となります。
知らなかったでは済まされないので、そのような行為は絶対にしないようにしましょう。
【取材協力弁護士】
澤井 康生(さわい・やすお)弁護士
警察官僚出身で警視庁刑事としての経験も有する。ファイナンスMBAを取得し、企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所の非常勤裁判官、東京税理士会のインハウスロイヤー(非常勤)も歴任、公認不正検査士試験や金融コンプライアンスオフィサー1級試験にも合格、企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富、その他各新聞での有識者コメント、テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。陸上自衛隊予備自衛官(3等陸佐、少佐相当官)の資格も有する。現在、朝日新聞社ウェブサイトtelling「HELP ME 弁護士センセイ」連載。楽天証券ウェブサイト「トウシル」連載。毎月ラジオNIKKEIにもゲスト出演中。新宿区西早稲田の秋法律事務所のパートナー弁護士。代表著書「捜査本部というすごい仕組み」(マイナビ新書)など。
事務所名:秋法律事務所
事務所URL:https://www.bengo4.com/tokyo/a_13104/l_127519/