Text by CINRA編集部
ブラッド・メルドーのニューアルバム『After Bach II』『Apres Faure』が5月10日に海外でリリースされる。
バッハをテーマにした『After Bach II』は『平均律クラヴィーア曲集(Well-Tempered Clavier)』から4つの前奏曲と1つのフーガ、“パルティータ 第4番 アルマンド”から構成。バッハからのインスピレーションをもとに、バッハ『ゴルトベルク変奏曲』含め、メルドーによる7曲のオリジナルとインプロビゼーション楽曲も収録されている。
『Apres Faure』では、フランスの作曲家ガブリエル・フォーレの作品から4つのノクターンと“ピアノ四重奏曲 ト短調”のアダージョの抜粋を演奏。フォーレからインスピレーションを受けたメルドーによる4曲のオリジナル楽曲がアルバム中盤に収録されている。
両作は日本盤の発売も予定。詳細は後日発表される。
音楽配信サービスでは、『After Bach II』からメルドーのオリジナル曲の“Between Bach”とバッハ“フーガ 第20番 イ短調”、『Apres Faure』からメルドーのオリジナル曲“Apres Faure: Prelude”が先行配信中。
メルドーはバッハの音楽の「普遍性」についてライナーノーツで「バッハに取り組めば取り組むほど、私自身のパーソナリティが、否が応でも浮き彫りとなる。それは、私がバッハを演奏しているのではなく、バッハに操られているような感覚で、バッハが私自身を剥き出しにしているのだ…。(演奏において)常に、最良の選択というのは必ずあるもので、その全てが、あるべき場所からやってくる。具体的に言えば、ハーモニーとメロディーを紡ぐ中で絶え間なく行われる選択だ」「これはバッハが、ジャズ・ミュージシャンとしての私にとってお手本であるからだ。インプロビゼーションのソロでは、私は調和のとれた音色を奏でる旋律を目指し、メロディアスな手法で躍動するハーモニーを創り出したいと思っている。これは、表現力における決定的な要素だ」とコメント。
『Apres Faure』については「崇高さが、私たちの死を免れない人生を予兆するものであれば、このアルバムに収められた音楽は死の厳しさを伝えるものだろう。フォーレは、彼に近づけるけど、それは私たち自身の不安に近づくことでもあるような、そんな存在だ。最終的には、フォーレが未来に、そして私たちに投げかけた疑問符の形をとって、彼との密接な繋がりを感じる。アルバムにはフォーレの楽曲と合わせて、4曲のオリジナル曲が収められているが、それは、この楽曲を通して、私がどのようにフォーレの疑問に取り組んできたのかということを、聞き手である君たちに共有するためだ」「この取り組み方は、私の『アフター・バッハ』のプロジェクトと通じるものがある。作品同士の繋がりはそこまで明確ではないが、フォーレの調和のとれた音楽は(バッハの作品に)一致する。さらに、彼が自身の素材をピアノ的な観点からどのように表現したのかということに関して、質感的な影響力もある。どういうことかと言うと、フォーレは、楽器の響きを巧みに利用したのだ、表現方法の一つとして。それで言うと、例えば、私の最初の『Prelude』では、メロディーが連続的なアルペジオに溶け込んでいる。その一部と、その全体の両方に。そして『Nocturne』では、フォーレの第12番のオープニングにおける懐かしいコードのアプローチを耳にすることができる」と語っている。