子どもは生きる環境を選べない。いじめに遭うとどこにも逃げ場がないと感じ、追い詰められてしまうこともあるだろう。「いじめられた側は、一生忘れません」と思いを語るのは、岩手県に住む30代前半の女性だ。中学時代、上下関係の厳しいバレーボール部に所属していたが、あるときから「同じクラス、同じ塾、同じ部活の中」で、いじめの被害に遭ったという。
「無視、聞こうえるようにわざと話す嫌がらせ等。 まだ14歳の私には受け流す術もなく、ただただ耐えるしかありませんでした」
と振り返る。きっかけは些細なことだったというが、女性は不登校になってしまった。
「事情を知っている男子たちは優しくしてくれた」
もちろん先生や親の知るところとなり「別室通学、図書室通学」など、なんとか学校へは行っていた。しかし、「いじめてくる同級生が同じクラス、同じ部活、同じ塾」なのは変わらない。そんな環境に「耐えられるものではありませんでした」と苦しみを綴る。
とはいえ高校受験を間近に控え、内申点のこともあり担任と相談。「先生が、ずっと教室にいてくれるのであれば登校できる」と自分で決断し、通常登校を再開した。
「久しぶりの教室に緊張したものの、机は先生の目の前になり、いじめてくる女子は何も変わらなくとも、事情を知っている男子たちは優しくしてくれたのがとても嬉しかったです」
こうして中学時代の約2年を耐え、他の誰も進学しない高校へ入学することが出来たという。しかし、いじめの傷が癒えたわけではなかった。
中学の集まりで再会し…酔った勢いでいきなり「あのときはごめん」
時が経ち、あるとき地元のお祭りで市内の中学ごとに参加する行事があり、高校の同級生に参加しようと誘われた。気乗りしなかったものの、出てみたい気持ちもあり参加したという。しかし……
「やはりその場でも、昔のことは決して忘れられることではなく、気を使ってくれる同級生も居れば、そんな昔のこともう覚えてないよとか、いつまでそんなこと言ってんのとか、やはり当事者でなければ分からないことはあるのでしょうが、私には許せませんでした」
と、当時の心境を吐露する女性。そんな複雑な心境で過ごしたお祭りの後、中学時代のクラスごとに集まり、飲み会へ行くことに。しかし、そこで女性にとって思いがけないことがあった。
「仲の良かった男子に誘われ、嫌だったらすぐ帰ればいいと参加しましたが、そこで、当時、私をいじめてた当事者が酔った勢いでいきなり、『あの時はごめん』と言ってきたのです」
「察した私は、聞こえない振りをし、それでもそのままの勢いで言ってこようとするので、私は『聞きたくない!』と拒否をしました。酔った勢いで? 謝れば済む? 謝って無かったことに? 自分がスッキリしたいだけ? と私の頭の中は怒りで溢れてしまいました」
とつぜんの謝罪に動揺を隠せない女性だが、「あの時のあの2年間は謝られても、もう戻ってきませんし……」と憤りを綴る。結局たいして楽しむことも出来ず、昔のことを引きずったままに今に至るという。
「そんなこともあり、地元に帰る時は極力出掛けず、地元に戻りたいとは微塵にも思いません。あの経験は私の性格を、マイナス思考に、卑屈に、気弱にしてしまいました。本当に人生でつらい出来事でした」
そんな「許せない友人たち」だが、いじめられていたとはいえ狭いコミュニティだけに、そのときはまだ繋がりがあった。しかし、それを機に「LINEも電話番号も全て削除しました」と完全に縁を切ったことを明かした。それでも
「きっといじめられた側は、一生忘れません。いじめてくる人は、どこか性格形成や家庭環境等に問題があり、弱い相手を見つけて攻撃するのでしょうが、やられた側は一生忘れませんし、何があっても許しません」
と、いまだに憤りが収まらない様子だ。最後に、いじめてきた相手に対し「こんな過去、今の家族には知られたくないでしょうね」と皮肉めいた言葉で締めくくった。
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