2024年03月11日 10:10 弁護士ドットコム
春の新生活を前に、一人暮らしを始める女性は「下着の処分」について慎重にならざるをえないかもしれない。
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ゴミ袋をあさられて女性用下着を盗まれたという被害がSNSで相次いで投稿されている。ゴミ袋から回収した下着の画像だとして、SNSに投稿する人も確認されており、そうした投稿者は「下着を救出している」と主張しているが、理解に苦しむ。
こうした"活動”をする人たちは「下着救出界隈」と呼ばれ、そのおぞましさから「気持ち悪いとかの次元じゃない」などと嫌悪の反応が見られる。
下着メーカーによると、女性のブラジャーを捨てるには、燃えるゴミ(布)と燃えないゴミ(ワイヤー・ホック・アジャスター)を切り分ける必要がある(※地域によって分別方法は異なることがある)。メーカーによっては不要になった商品を回収しているが、消費者が気軽にいつでも利用できるわけではない。
このように処分に手間がかかるほか、上記のような「ゴミ袋あさり」を懸念して、なかなか自分では捨てられず、ホテルに泊まる機会に捨てていくという女性もいるほどだ。
また、娘の下着を切り刻んで小袋に包んでからゴミ袋に入れる家庭もあるといい、女性たちは下着の適切な処分に困っている状況があると言えそうだ。
SNS上では「とんでもねぇ」「闇が深い」といった反応が見られる。はたして、ゴミ袋から下着をあさり、それをSNSに投稿する行為は、犯罪に問われないのだろうか。寺林智栄弁護士に聞いた。
まず、ゴミ捨て場のごみ袋から下着をあさる行為は、窃盗罪(刑法235条)に該当する可能性があると考えます。
捨てられた物なので、誰の占有にも属していないため、占有離脱物横領罪(刑法256条)に該当するか、もしくは犯罪にならないと思われる方もいるかもしれません。
しかし、ゴミ捨て場にあるゴミには、その場所の管理者の「管理権」が及んでいるといえます。たとえば、マンションやアパートのゴミ捨て場であれば管理会社や大家、住宅街のゴミ捨て場であれば町内会長などです。
そういった管理者の管理権限を侵害して、ゴミをあさっていくのであれば、窃盗罪に該当するでしょう。
自治体によっては、ゴミの持ち去りは条例で禁止されていて、罰金などの罰則が設けられていることもあります。
また、ゴミは個人のプライバシーを反映するもので、袋を縛って閉じて出されている以上、その中身をあさられないという法的利益が、プライバシー権の一環として保障されていると考えられます。
袋を開けてゴミをあさる行為は、こういった個人のプライバシーの侵害に該当します。
たしかに、一度ゴミ捨て場に捨てられたゴミが誰のものかを特定することは難しいかもしれませんが、ゴミの中には、捨てた人を特定するものが含まれていることも少なくないでしょう。
そうであれば、ゴミをあさる行為が上記のような法的利益を侵害する不法行為(民法709条)にあたるとして、民事上、慰謝料を請求されることもありえます。
一方で、あさった下着をSNSに投稿する行為については、今のところ処罰する法令はありません。
ですが、SNSに投稿すれば、投稿者が特定できる可能性があり、あまりに何度もこういった行為に及んでいる場合には、捜査機関に人物が特定されて、摘発される可能性があります。
投稿者がどのようなつもりで、ゴミ捨て場から盗んできた下着をSNSにあげているのかはわかりませんが、摘発される前に速やかにやめることをおすすめします。
【取材協力弁護士】
寺林 智栄(てらばやし・ともえ)弁護士
2007年弁護士登録。札幌弁護士会所属。法テラス愛知法律事務所、法テラス東京法律事務所、琥珀法律事務所(東京都渋谷区恵比寿)、ともえ法律事務所(東京都中央区日本橋箱崎町)、弁護士法人北千住パブリック法律事務所(東京都足立区千住)を経て、2022年11月より、NTS総合弁護士法人札幌事務所。離婚事件、相続事件などを得意としています。
事務所名:NTS総合弁護士法人札幌事務所
事務所URL:http://nts-law.jp