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【漫画】愛猫を失った悲しみから前を向くためにーーSNS漫画『うまれかわれない』が教えてくれる切ない決意

2024年03月10日 18:40  リアルサウンド

リアルサウンド

『うまれかわれない』より

 人の願いが込められた「物語」には、奇跡があふれている。たとえば、失われた命を取り戻す……というのも定番の展開だが、悲しいことに、それが現実になることはない。3月上旬にXに投稿されたオリジナル漫画『うまれかわれない』は、ペットロスのリアリティを描きながら、「別れを受け入れ前を向く」という大切な心の機微を伝えている。


(参考:漫画『うまれかわれない』を読む


 本作を手掛けたのは、以前は「読者のツボ」を捉えた作品を作っていたが、最近は自分の内面の感覚を意識したうえで創作できるようになったという電気こうたろうさん(@gurigurisun)。あふれる思いを切なく優しい物語に昇華させた本作をどのようにして描いたのかなど、話を聞いた。(望月悠木)


■ペットを亡くした体験がキッカケ


――なぜ『うまれかわらない』を制作しようと思ったのですか?


電気:もともと『うまれかわらない』はリメイク作品です。そのリメイク作品をベースにしつつ、自分自身の体験や心情をエッセンスとして多く入れた内容にしました。


――つまりは電気さんもペットを亡くした経験があると。


電気:そうです。犬と猫を飼っていたのですが、どちらも亡くなってしまい、いつまでも忘れられずに想い続けていました。また、フォロワーさんが大事に育てていた猫ちゃんやわんちゃんが死んでしまったことを知り、たまらない気持ちになり、描かずにはいられなくなったことも大きいです。


――辛い経験から着想を得て、誕生した作品なのですね。


電気:はい。実家で一緒に暮らしていたピー助という犬がいて、彼が死んでしまったことに深い悲しみを覚えました。その後はペットショップなどに行くと、ピー助の柄や雰囲気が似ている犬を知らず知らずのうちに探したり、ピー助の誕生日や命日が近づくとついつい名前を呼んだりなどしました。


――まさに登場人物の女性と同じような言動をしていたのですね。


電気:その通りです。ペットショップでピー助と似た犬を見ている私に対して、当時交際していた人から「その子はピーちゃんじゃないよ違うよ」と言われたことが心に残っており、そこから着想を得て本作を作り上げていきました。


■「生まれ変わらない、ずっと側にいる」


――ラストページの陰がまるを思わせました。野暮ですが、ラストページは何を表現したのですか?


電気:この漫画のテーマは「生まれ変わらない、ずっと側にいる」です。そのため、「まるは生まれ変わらずに、ずっと側にいてくれるんだ」ということを意識して描きました。


――そもそも、『うまれかわらない』というタイトルがキャッチ―かつ力強いですね。


電気:心の底から湧き上がってきたタイトルでした。「これ以外ない」と思ってタイトルにしました。


――1ページの「その夜風が吹いた」というナレーションをはじめ、本作でも言葉1つひとつに重みがありました。


電気:「ナレーションは詩のように、セリフはシンプルにしよう」と思って、作中の言葉は選んでいます。そういう意識が心に残るセリフを生まれさせたのかもしれません。


――ちなみに「これ意外や意外」など、ついつい口に出したくなるような言い回しも面白かったです。何気ない会話はどのように作っていますか?


電気:私は他人と話すことが好きです。「これ意外や意外」というセリフは、「以前に通っていた動物病院の先生が使っていたな」といった思い出があって採用しました。ちなみに「セリフを考える時はいろいろな人の顔を浮かべながら決めているな~」ということに今気づきました。


――今後はどのように漫画制作を展開させていく予定ですか?


電気:自分の中の詩的な部分や感覚的な描き方を追及していきたいです。また、いい漫画をいっぱい描いて、個人通販にたくさん出展しようと思っています。本作も3月9日から販売開始する予定なので、ぜひ手に取ってもらえたら嬉しいです。


(望月悠木)