F1第2戦サウジアラビアのジェッダ市街地コースで行われた初日フリー走行を終えた時点で、カルロス・サインツが虫垂炎のためレースを欠場。フェラーリは同じ週末のFIA F2に参戦していたリザーブドライバー、オリバー・ベアマンの抜擢を決めた。本人がF1デビューを告げられたのは、翌土曜日の朝。F2のレース1、フィーチャーレースをポールポジションから出場する直前だった。
イギリス出身のベアマンは、現在18歳。イタリアF4、FIA F3などを経て、昨年からFIA F2に参戦。去年終盤のメキシコ、アブダビGPでは、ハースからFP1に出走。アブダビテストにもハースから参加し、年明けには2022年型フェラーリF1-75を走らせるなど、F1マシンの経験は少なくない。
とはいえフェラーリの新車SF-24の運転は、もちろん初めてだ。それでも予選直前のFP3では慎重に周回を重ねながらも、総合10番手につけた。2番手タイムだったチームメイトのシャルル・ルクレールからコンマ7秒落ちのタイムは、まずまずと言えた。ただし、コース序盤のセクター1だけでコンマ5秒遅い。F2マシンとは異次元に速い高速S字での切り返しに、手こずっているのは明らかだった。
夜になって路面温度が7℃近く下がった予選。Q1最初のアタックは1分30秒136。ルクレールには1秒1の大差をつけられた。セクター1のコンマ5秒のギャップもそのままだ。しかし、2回目のアタックでは自己ベストを1秒以上更新する1分28秒984を叩き出し、総合9番手でQ2に進んだ。
Q2では最初のアタックをニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)の赤旗で中断される事態にも遭遇した。2セット目のタイヤでのアタックも、鬼門のセクター1でタイムロス。2回目のプッシュラップで1分28秒642をマークしたものの、10番手ルイス・ハミルトン(メルセデス)に100分の36秒及ばずQ2落ちを喫した。
一方で、総合2番手につけたルクレールとの差はコンマ6秒まで縮まった。セクター1だけでも0.215秒差まで短縮。少しのミスが大事故に直結する超高速市街地サーキットという厳しい条件下で、ベアマンはこれだけの進化を見せたことになる。
すでに去年のメキシコGPでのはハースでの初F1走行の際、小松礼雄現チーム代表は、「非の打ちどころがない」と、ベアマンをベタ褒めしていた。「大きなミスはないし、とにかく落ち着いている」。「うまくいかないラップがあっても、原因を自分自身で把握し、次のラップで適応する能力を持っている」
自分にも他人にも厳しく、忖度おかまいなしの小松エンジニアがここまでドライバーを高く評価するのは非常に珍しいが、その評価通りの行動を今回の予選でも発揮したということだろう。
26歳のルクレール、18歳のベアマンのラインアップは、フェラーリ史上最年少のペアだ。さらに、フェラーリアカデミー出身ドライバーコンビとしても、初めてのレースでもある。第2戦サウジアラビアGPはフェラーリに新たな歴史を刻む日となりそうだ。