2024年03月09日 08:50 弁護士ドットコム
現在、全国でコンサートツアー中の歌手・浜崎あゆみさんが3月6日、自身のインスタグラムのストーリーで「NO高額転売!!」と注意喚起をした。定価1万円のチケットを3万5000円以上で販売する転売サイトのスクショをアップし、「転売ヤーの皆さん、リセールチケットを大量ホールドし続けるのもNO!!」と呼びかけている。
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昨年(2023年)10月にも、「ayumi hamasaki 25th Anniversary Live Tour」の公演チケット(公式サイトでは1万1000円)が、7万3000円などの高額で転売されていることに苦言を呈した浜崎さんだが、転売ヤーたちの動きは止まらないようだ。
2019年には「チケット不正転売禁止法」が施行され、やむを得ない事情でチケットを売るための「リセール」システムも浸透しつつある。これまでも数々のアーティストが「転売はやめて」と表明しているのに、どうして転売はなくならないのか。
転売サイトの実態について、旧ジャニーズ事務所(現・STARTO ENTERTAINMENT)所属グループのファン(埼玉県の40代女性)は「公式のリセールがないので、前方などの良い席で見たいという人の欲望があるかぎり転売はなくならない」と断言する。
事務所側も転売を禁止するべく、コンサートによっては本人確認をすることもあるという。過去、ある人気舞台では前列席が20万円の高値で転売されていたところ、一斉に本人確認を行ったため、最前列に人がほとんどいないこともあったそうだ。しかし——。
「本人確認はいつも徹底しているわけではありません。入場時に本人確認必須にしたら開演10分前でもガラガラになって、急遽全員入場オッケーになったことも。2.5次元の舞台では、顔認証で完全に転売できない仕組みでやってる公演もありますが」
そもそもチケットは争奪戦。優先販売の申し込みをするため、ファンたちは友人や家族の名前を使ってファンクラブの名義を増やすしかない。「名義をたくさん作って大量に申し込んだ結果、複数取得できたような場合には転売するという悪循環が起きている」と、このファンは指摘した。
法的にはどうなっているのか。音楽コンサートのチケット転売問題に取り組んできた太田純弁護士は、「チケット不正転売禁止法によって、明確に禁止されている」という。
「ごく簡単に言えば、チケットの券面や電子チケット上で、(1)特定の人だけが入場できること、(2)転売を禁止していることが表示されているものについて、他人に対して、定価よりも高い値段で転売する行為が禁止されています。また、不正転売を目的とした仕入れ行為も禁止されています」
「会員情報を偽り、架空人や第三者名義で成りすましてファンクラブに入会し、優先権や抽選権を獲得し不正転売する例もありますが、文書偽造罪や同行使罪にも抵触する違法行為に該当します」
転売で高額チケットを入手しても、受付で拒否される事態になることもある。そのような事態にならないためにも、転売チケットは買わない以外に撲滅策はないのだが……。様々なリスクをわかっていても転売を利用するファンがいる以上、有効な策を見出せないままイタチごっこが続いているようだ。
【取材協力弁護士】
太田 純(おおた・じゅん)弁護士
訴訟事件多数(エンタメ、知的財産権、名誉毀損等)。その他、数々のアーティストの全国ツアーに同行し、法的支援や反社会的勢力の排除に関与している。
事務所名:太田純法律事務所
事務所URL:https://www.jota-law.jp/