ライブ、握手会やチェキ会といったイベントを精力的にこなし、空き時間にはSNSでの情報発信も行なうアイドルたち。眩しい笑顔の裏で、心身ともに疲弊していることはあまり知られていない。
アイドルのセカンドキャリアをサポートしている株式会社ツギステは、現役アイドルとアイドル経験者を対象に、「アイドルのココロとカラダの実態調査」を行い、3月6日に発表。すると、
「半数以上の女性アイドルが、活動中に精神疾患を患っている」
というショッキングな結果が明らかになった。
ほかにも過酷なダイエットや生理の問題など、アイドルたちは心身に悩みを抱えながら、活動している様子が見えてきた。調査を行ったツギステの代表で渋谷区議会議員の 橋本ゆきさん（31）に話を聞いた。橋本さんは17歳でアイドル活動を始め、人気グループ「仮面女子」のメンバーとして9年間活動していた経験がある。当時の体験も交えて語った。
「生理が2年間止まり、不安障害と軽度のうつ病と診断。ステージに立つことが怖くなった」
調査は、ツギステの行うサポートプログラムに登録している現役の女性アイドルらを対象に1月に実施。Xやインスタグラムでも呼びかけ、現役アイドル44人とアイドル経験者59人の合計103人から回答を得た。
調査には、橋本さん自身の経験が生きているようだ。
「私自身、過激なダイエットで生理が2年間止まり、不安障害と軽度のうつ病と診断され、ステージに立つことが怖くなってしまった時期がありました。メンタルや体に不調を抱えるメンバーが私の周りにもいたので、『アイドルは過酷だな、心も体もボロボロになっちゃう』という体感がありました。現在、ツギステにサポートを求めてこられる現役アイドルさんと経験者の方も、心の不調を強く感じていたり、辞めてからも引きずっていたりということがとても多く、新しい環境に飛び込む前にすでにボロボロの状態です。
そのため、健全な状態でアイドル活動ができる環境をつくらないと、セカンドキャリアも難しいものになると実感しました。まずは現状を把握しようと思い、いろいろ調べましたが、アイドルの心と体の実態を調べた調査がなかったので、自分たちで調査することにしました」（橋本さん）
調査では、メンタルヘルス、 ダイエット、生理といったデリケートな問題を扱っている。 冒頭に紹介したように、52％が「アイドル活動中に精神疾患を患った」と回答した。さらに「アイドル活動中にストレス感じていましたか」という質問には、「常に感じている」という回答が26.5％、「よく感じている」は39.2％、「ときどき感じている」が34.4％で、「特に感じていない」は1人もいなかった。
「ダイエットをしたことがある」と回答した人は78.4％にものぼった。そのうち7割以上が、ダイエットの悩みとして「精神的に落ち込む・イライラする」「他人と比べて落ち込む」と回答している。
また、「生理不順・無月経になる」（35％）、「食べることに抵抗を感じる」（26.3％）という回答も多く、「過食嘔吐を行っていた」とコメントを寄せたアイドルも。生理不順や摂食障害につながりかねない深刻な状況も明らかになった。
調査結果より
昼はコンビニのおにぎり1個、夜はゼロカロリーのゼリーで18時以降は食べない
アイドルが過酷なダイエットに走ってしまう理由について、橋本さんは、
「ダイエットを始めたきっかけを聞くと、7割以上が『きれいになりたい、かわいくなりたい』や『自分の姿を見て太っていると思った』と答えていました。これはアイドルに限らず、若年女性全体に言えることかもしれませんが。アイドルは人から見られるお仕事なので、自分のなかのボディイメージというか、こういう姿でありたいというのが、人より基準が高いとは思います」
と推測する。
ダイエットの期間については、半数以上が半年以上のダイエットに取り組んでいた。「13か月以上」という回答も4割以上ある。橋本さんは「期間を決めてダイエットするのではなく、アイドルさんたちは恒常的なダイエットが当たり前になっています」と指摘する。
「私自身も20歳～23歳頃がそうでした。身長が154センチで体重は40キロでした。朝は家を出る前に栄養のありそうなものを食べましたが、お昼はコンビニのおにぎり1個くらい、夜はゼロカロリーのゼリーのみで、それも18時以降は食べませんでした。お腹がずっと空いている状態でした。そんなお腹がペコペコな状態でライブして、足の甲を疲労骨折し、生理も来なくなって…」
と当時を振り返った。周囲から「ガリガリ」と心配されるようになっても、ダイエットをやめることはできなかったようだ。ダイエットを始めて1年後には、不安障害とうつ病を発症してしまう。（※後編は3月8日公開予定）
