人にはなぜか運・不運のめぐりがあるが、西日本の某都市で働く路線バス運転手の40代男性は、年1回もないような乗客トラブルに月1ペースで遭遇する不運に見舞われた。
「あまりにトラブルが頻発するので、周囲にお祓いにいったほうがいいと勧められましたよ」という男性に、どんなトラブルがあったのかを聞いてみることにした。(取材・文:昼間たかし)
猛暑に続いて……
最初のトラブルは、猛暑に見舞われた昨年8月に起きた。
「お年寄りの男性が乗車中に倒れてしまったんです。乗ってきた時から体調が悪そうだなと思ったら、車内で耐えきれなくなったようで、気付いた乗客に声をかけられました。慌てて次の停留所で停車して救急車を呼びました。熱中症だったそうです」
次のトラブルは、それから数週間後、9月に入ってからのこと。
「今度は走行中に中年男性が、“気分が悪いから降りる”というのです。市街地だったので、じきに次の停留所だったので待って貰ったのですが、降りようとして倒れてしまい、また救急車を呼ぶことに。これまた熱中症でした。確かに、暑さが戻ってきた日でしたけどね……」
男性によると、このような乗客トラブルは「通常、年に一度あるかないか程度」だという。
「体調が悪そうな人が乗ってくることはありますが、車内で急に倒れる人はあまり聞かないです」と男性は語る。
翌10月も、トラブルは続く。
「終バスの数本前に、随分と飲んでるなという感じの男性が乗ってきたんです。終点についたら、寝ていて起きる気配がありません。起こそうとしても、全然起きなくて。ようやく降りてくれるまで30分ほどかかりましたね。あんなに起きない酔っ払いは人生で初めてです」
続く11月は、トラブルなしで月内最後の勤務日までたどり着いた。
「今月は平和だったなと安心して、朝バスを走らせていたんですが、いつも乗っている女子高生が降りようとしてつまづき、そのまま道路にダイブしました……。また救急車です」
さらに12月には、車内でつかみ合いの喧嘩があったそうだ。
「若い男女なんですが、乗ってくるときからずっと口げんかしているんです。迷惑だなと思ったら、ついに車内でつかみ合いの喧嘩になりそうで。さすがにマイク越しに“降りてください”と怒鳴りました。それでばつが悪かったのか、すごすごと降りていきましたが、ほかの乗客からクレームにならないかヒヤヒヤでした」
当初は「引きがいいな」などと軽口を叩いていた同僚も、ここまで連続すると「お祓いにいったほうがいいんじゃないか」と心配してくるように。
そして今年1月も……。
「年が明けたのでなんの根拠もなく、もう大丈夫だろうと思ってたんです。しかし正月明け、今度は乗車しようとした男性がつまづいて、車内にダイブ……今回は怪我もなく一安心でしたけど。さすがに次の休みに市内の神社仏閣を回りましたよ」
それが幸いしたのだろうか。2月はついに、何のトラブルもなく勤務を終えることができたという。
「とりあえず、事故に繋がるようなトラブルがなかったことは不幸中の幸いでしょうか。これで不運な時期は去ったと願いたいですが……」
3月を無事に過ごせるのだろうか。
男性は「とりあえず、普段よりもいっそうの安全運転を心がけている」と話していた。