チームの共同オーナーであるサム・ヒグネットによると、ハーツ・チーム・JOTAはメーカーワークスチームの“悩みの種”になることを目指しており、2台体制に増車して臨む2024年WEC世界耐久選手権の週末における学習率を、前年から倍増させるという。
このイギリス籍のプライベートチームは、2009年のF1ワールドチャンピオンであるジェンソン・バトンを迎え、フィル・ハンソンとオリバー・ラスムッセンとともに38号車ポルシェ963のラインアップに据えている。一方、2台目の12号車ポルシェ963にはウィル・スティーブンスが復帰。カラム・アイロットとノルマン・ナトとチームを組む。
2024年シーズンはJOTAにとって、前年の第3戦スパ・フランコルシャンでのデビュー以来、963で行う初めてのフルシーズン・キャンペーンとなる。
「彼らと話しているところでは、WECのシーズン開幕に向けてこれまでで最高の準備ができているようだ」とヒグネットはSportscar365に語った。
「2台体制になったことで事実上、新しいプログラムができた。1台のハイパーカーから2台のハイパーカーに移行するために必要なジャンプを過小評価することはできない」
「しかし、それでも私たちが素晴らしいポジションにいるのは、サプライヤーが迅速に対応しているおかげだと考えている。プライベーターの努力としては、可能な限り良い状態にあると思うよ」
ヒグネットは、チームが昨年も1台のハイパーカーと並行してLMP2マシンを走らせていたにもかかわらず、今季のハイパーカーの2台体制ではLMDhベースのハイパーカー1台につき21名というWECの運営スタッフ制限により、若干のスタッフ削減を余儀なくされていることを明かした。
「スタッフの数が減っているのは人数制限のためだ。現実には、新しい顔ぶれが何人かいる」と同氏は説明した。
「LMP2がオープンだったころは、ル・マンですべてを投げ打っていたが今はそれができない」
「このような短いレースでは、(通常の6時間よりも)おそらくひとりかふたり多いだろうが、ル・マンでは10人増員するところ、今は6人減っている」
■タイミングよく鳴った1本の電話
12号車を駆るスティーブンスは、ハイパーカーチームに復帰した唯一のドライバーだが、ヒグネットは最初のいくつかのハードルにもかかわらず、すべてがうまくいったことに満足していると語った。
「ノルマン(・ナト)は何年にもわたって我々のチームの良き友人であり、素晴らしい仕事をしてくれている」と彼は述べた。「アントニオ(・フェリックス・ダ・コスタ)が(WECでのレースを)許されなくなったとき、彼はその座を射止めた。それが明らかだった」
「そして、黄色いクルマ(AFコルセ83号車フェラーリ499P)がもうひとりのドライバー(イーフェイ・イェ)を奪ったとき、興味深いことにそれは素晴らしいタイミングだった」
「文字どおり、そのメールを受け取った朝、カラム(・アイロット)のマネージャーから電話が掛かってきて、『インディーカーのシートがあるかどうかわからない。何かない?』と尋ねられたんだ」
「契約はそれから1週間以内に決まった。カラムをスポーツカーに連れて来て、彼にいいチャンスを与えられるのは素晴らしいことだ」
「もう1台のマシンは本当に強いと思う。オリバー(・ラスムッセン)はスポーツカー(のレースキャリア)を始めたときから私たちと一緒にやってきた。フィル(・ハンソン)についても私たちはこの6年間、彼がドライバーとして成長する姿を見てきたし、昨年は驚異的なポールポジションを獲得している」
「ジェンソン(・バトン)はジェンソンだ。彼はチームに素晴らしいレベルの自信と成熟と経験をもたらしてくれるだろう」
2024年初の公式セッションが行われた2月26日のテスト初日に、セッション1、セッション2と続けてトップタイムを記録したチームへの期待について尋ねられたヒグネットは、2台体制の強みに言及した。
「FPセッションなどでの学習率は2倍になるはずだ」と彼は言った。「我々が期待しているのは、ファクトリーチームにとって“悩みの種”と言える厄介な存在になること。それが私たちの目標だ」