ジョセフィン・デッカー監督の映画『Shirley シャーリイ』が今夏公開される。デッカー監督の初長編『Butter on the Latch』に惚れ込んだというマーティン・スコセッシが製作総指揮を務めた『Shirley シャーリイ』は、アメリカの作家シャーリイ・ジャクスンの伝記をもとにした心理サスペンス。スランプから抜け出せないシャーリイが、ひどい扱いを受けても自分の世話を焼く居候のローズを通じて次第に執筆のインスピレーションを得ていく一方、ローズはシャーリイのカリスマ性に魅入られ、いつしか2人の間に奇妙な絆が芽生えていくというあらすじだ。シャーリイ役をエリザベス・モス、ベニントン大学教授で夫のスタンリー・ハイマン役をマイケル・スタールバーグ、ハイマンの補佐として職を得たフレッド役をローガン・ラーマン、フレッドと共にシャーリイらと共同生活を送る妻のローズ役をオデッサ・ヤングが演じた。デッカー監督はシャーリイ・ジャクスンについて「ある批評家か伝記作家が<シャーリイは政治的な作家ではない>と指摘していたが、しかしシャーリイは私的なレベルにとどまりつつ政治を意識していたと思っている」「だからこそ彼女の作品は今でも響き続けるのだ。彼女の作品は非常に人間的だから時代を超えて読まれている。シャーリイは非日常的な設定、心理描写、あるいは潜在意識に訴える巧みなリズムを使って人種差別、階級差別、性差別と闘っていたのだ」とコメント。脚本を手掛けたサラ・ガビンズはシャーリイ・ジャクスンについて「彼女は数多くの短編や長編を残したが、ホラー作品によくある吸血鬼やゾンビや幽霊や神話上の怪物は登場しない。その代わり日常のありふれた風景の中に恐怖を見出すのがシャーリイの小説の特徴でもある。<人間こそ恐ろしい怪物であり、私たち自身の精神が血に飢えた悪魔的な妖怪であり、私たちの社会はのどかなパーティーを楽しみつつ石打ちの刑にも加われる気まぐれな人々の集まりである>」と述べている。