2024年02月26日 10:30 弁護士ドットコム
業績悪化で移転したオフィスのトイレが「男女共用」で耐えられないーー。弁護士ドットコムに、女性からこのような相談が寄せられている。相談者を含む女性社員は、わざわざオフィスを出て他のビル内の女性トイレに行くという。
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職場のトイレにもルールがある。従来は男女別とされてきたが、2021年に労働安全衛生規則が見直され、従業員10人以内の事務所であれば共用トイレ1個を設置すればよいこととされた。
しかし、ネット上には、会社で共用トイレを使っている人から「生理中に行きづらい」「気を遣うからギリギリまで我慢する」などの投稿も並ぶ。特に、便座が上がっていた場合、前に利用していた男性が便器を汚している可能性もあり、「絶望しかない」と嘆く女性もいる。
小規模の事務所では我慢するしかないのか。徳田隆裕弁護士に聞いた。
職場のトイレについて定めた労働安全衛生規則が改正されたのは、2021年12月のことだ。同規則628条の2では、次のように規定されている。
「同時に就業する労働者の数が常時10人以内である場合は、男性用と女性用に区別しない四方を壁等で囲まれた一個の便房により構成される便所を設けることで足りるものとする」(労働安全衛生規則628条の2)
従業員の数が10人以内の会社であれば、男性用と女性用を区別しない独立個室型のトイレを1つ設置すればよいということになる。なぜ、このような改正がされたのか。徳田弁護士は、次のように説明する。
「住居使用を前提として建築された集合住宅の一室を作業場として使用している場合などは、トイレが1カ所しか設けられていないこともあります。建物の構造などの理由から、男性用と女性用を設けることが困難な場合もあるためです。
法律上は、従業員の数が10人以内の場合、男女共用のトイレが1つしかなかったとしても、違法ではありません。そのため、男女別のトイレを設置するよう会社に改善を求めるのは、なかなか難しいといえるでしょう」
法改正時のパブリックコメントには、以下のような反対意見が複数寄せられていた。
「小規模な事業所ほど女性が多く働いており、マイナス方向に影響を受ける人が多く無視できないため、小規模事業場であっても、トイレは男女別に設置することを原則とすべき」「男女共用のトイレを設置すること自体、以下の観点から認めるべきでない。・ 盗撮や性暴力の増加への懸念・ 女性の社会進出の阻害等の観点・ 臭いや生理用品等による精神的苦痛の観点・ 衛生面(男性が小便をした後の便座の汚損等による不快感や膀胱炎を起こす危険性、使用済み生理用品を捨てられず持ち帰る場合の衛生面の観点)」
改正によってトイレが1つしかないことが「違法」ではなくなり、女性労働者からは不満や抵抗を示す声があがっている。徳田弁護士は、2つの対処方法を提案する。
「1つ目は、女性労働者が中心となって会社内で協議し、トイレのルールを決めることです。具体的には、消臭や清潔の保持についてのマナー、サニタリーボックスの管理方法、盗撮などの犯罪行為の防止措置などについて協議するとよいでしょう。
会社がルール作りに対応してくれない場合は、2つ目の対処方法として、社内で労働組合を結成すること、または、外部の労働組合であるユニオンに加入し、会社との間でトイレのルール作りに関して団体交渉をすること、が挙げられます。
トイレが男女別になっている物件に事業所を引っ越すことを求めて、団体交渉することも考えられます。ただし、引っ越しは大掛かりなので、現実的ではないかもしれません」
誰もが使いやすい職場のトイレにするため、会社側にもルール作りなどの対応が求められている。
【取材協力弁護士】
徳田 隆裕(とくだ・たかひろ)弁護士
日本労働弁護団、北越労働弁護団、過労死弁護団全国連絡協議会、ブラック企業被害対策弁護団に所属し、労働者側の労働事件を重点的に取り扱っています。ブログ(https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog)、YouTube(https://youtube.owacon.moe/channel/UCWJQX9xTgXZegEOHZUidsdw)で労働問題について情報発信をしています。
事務所名:弁護士法人金沢合同法律事務所
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