2024年02月17日 07:40 弁護士ドットコム
女優・広末涼子さん(43)の所属事務所「フラーム」は2月16日、公式ホームページで同日付で広末さんが退社することを発表した。
【関連記事:「16歳の私が、性欲の対象にされるなんて」 高校時代の性被害、断れなかった理由】
広末さんは、2023年6月にダブル不倫が報じられ、同7月には前夫と離婚した。同事務所は「多くのファンの皆様、関係者の皆様にご迷惑、ご心配をおかけしてしまい、大変申し訳ございませんでした」と謝罪。広末さんと話し合う中で、「本人の意向を尊重し、双方合意の上で、この結論にいたりました」としている。
報道によると、広末さんは今後「個人事務所を設立して独立するとみられる」という。芸能人が独立した場合、どんなメリットやデメリットに直面することになるのか。芸能法務にくわしい河西邦剛弁護士に聞いた。
芸能事務所に所属していれば、外部とのやりとりのすべてにおいてマネージャーが窓口となります。出演等の依頼内容について聴き取り、オファーに対してその場で即決ということではなく「確認しご連絡します」とワンクッション挟むことになります。
このワンクッションが非常に重要になります。その間に事務所内で、ギャラを含めた条件面、タレント本人への負担感、ドラマであれば拘束期間、現在進行している別の仕事との調整について検討し、オファーについて回答します。
その際、マネージャーが窓口となって条件交渉することで、タレントに有利な交渉ができます。逆に、ギャラについてハードな交渉をしたとしてもタレントが窓口にはならないので、クライアント先がタレント本人へのネガティブなイメージを持つことを避けられます。
しかし、独立後は出演に向け自分で交渉していくことになります。タレント本人は交渉のプロではなく交渉の経験がない場合もありますので、まず交渉の進め方について悩みますし、タレント本人からすると誰が信頼できるのか判断が難しい。結果、出演料や条件なども取引相手の言い値になりがちです。営業や交渉にも「プロがいる」ということです。
昨今、原作者の方の権利保護が社会問題になっています。タレントでもクリエイターでも個人で大企業相手に交渉する場合、不利な交渉になるおそれがあり、その結果、不当に活動を制限されることにすらなりかねません。
2023年頃から変わってはきているものの、現実問題として、大手芸能事務所を辞めたタレントに対しては、メディア側が旧所属事務所の意向を忖度し、辞めたタレントにオファーをしづらいという状況がありました。
もちろん、芸能事務所側がメディアなどに不当に圧力を加えることは独占禁止法違反になりえますが、現在でもグレーな部分が存在しないとは依然として言い切れません。
独立し個人事務所を設立すると、ギャラの総取りができ、仕事の自由度が上がると考えられます。
ただし、個人事務所でもマネージャーを雇用すれば人件費が発生しますし、事務所の賃料、光熱費など様々な費用も発生します。実質的にギャラがすべて手元に残るということではありませんが、どのように事務所を運営していくかも含め自由度が上がるということです。
すでに知名度のあるタレントか新人タレントかで事務所に所属するメリット・デメリットはまったく異なります。
売り出し中のタレントの多くがまず頭を悩ますのが、仕事の獲得でありオファーを受けることです。特にテレビドラマへの出演は、すでに出演歴のある芸能事務所のタレントが優先される傾向にあるので、新人に急にドラマのオファーが来るケースはまれです。
これから芸能人としてやっていこうという方にとっては、特に大手芸能事務所に所属するメリットは少なくないと感じられるのではないでしょうか。他方で、広末さんのようなすでにかなりの知名度のあるタレントさんにとっては、独立することの自由度を優先するというケースもあるのかと思います。